くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「わたしたちの宣戦布告」「そして友よ、静かに死ね」

わたしたちの宣戦布告

「わたしたちの宣戦布告」
実話を元にした難病物映画ですが、実によかった。なんといっても映像と音楽のセンスが抜群にいい。映像が物語を語っていくという展開がとっても明るくて楽しいのである。

物語は一人の赤ちゃんがMRI検査の中に入っていくショットから始まりタイトル。そして主人公の夫婦ロメオとジュリエットが知り合うシーンへ移っていく。そして引かれ会った二人にはアダムという男の子が産まれる。しかし、様子がおかしいアダムを病院で見てもらうと脳に腫瘍があるという。

こうして、この夫婦とアダムの闘病の物語が始まるのですが、美しい風景のシーンにかぶせた二人のシーンや軽快な音楽や歌に乗せて描かれる映像のリズム感がとってもいい。時にクラシックを用いて心の動揺を演出したりと、映像と局のコラボレーションが絶妙なのである。

手術は成功するが悪性の腫瘍でそれからガンとの闘病生活の物語になる。ここでそれまでのハイテンポなリズムが少しなりを潜めるが、その後、奇跡的にアダムは手術後5年経過して医師から大丈夫だと宣告されてハッピーエンドになる。

全体が映像詩ののように語られていくドラマがしりあすなのにこの夫婦の力強さがしっかりと描けているし、なんといっても夫と妻のそれぞれの違いが実に鮮やかに描写されている。手術の日にそれぞれの両親が集まってくるあたりまるでミュージカルの群衆シーンのごとくである。

実話であり、結末がハッピーエンドだとわかっている上での演出なので全体が明るくなってしかるべきであるが、映画として映像作品として仕上げられた監督の感性に拍手したい一本でした。

エンドタイトルで宣伝にも使われた軽快な音楽が流れると思わず胸が熱くなった。これは掘り出し物の一本だった気がします。


そして友よ、静かに死ね
近年のフランスフィルムノワールの典型的な映画で、親友で若い頃から一緒になってギャング生活をした二人の男の友情とその結末を描いた男のドラマである。

若い頃親友と一緒にギャングまがいの毎日を送ってきたモモンもいまはそれなりの金を蓄え、平凡な家族をもっておとなしく過ごしている。そこへ親友セルジュが警察に捕まったという知らせが届く。巨大な組織と関わりその組織を裏切って危ない状況であることを知っているモモンは危険を冒して彼を助ける。

現代のモモンとセルジュの物語と彼らの若い頃の話が交互に細かく展開する。カットやシーンが非常に細かすぎてめまぐるしいといえばめまぐるしい。この作品の欠点をあげればその点かもしれませんが、しっかりと描かれた人間ドラマはなかなかの物だと思います。

結局、35年にもわたって裏切っていたのはセルジュであることがラストで判明、それなりの身の処遇を勧めてピストルを与え去っていくモモン。警察が踏み込むか踏み込まないかの間に銃声が聞こえてエンディング。

セルジュの娘さえも殺され、周辺の仲間たちが次々と殺される中で必死でセルジュを守るモモンの姿が物語の中心になるが、ちょっとむりがあるといえばないわけではない。ここまで追い込まれればもっと何らかの手段を講じるべきだと思いますがひたすらセルジュ一人を守るというのはいかがなものでしょうね。

前半の繰り返される派手な銃撃戦のシーンの積み重ねから後半、どんどん身の回りに危険が迫ってくるモモンがついに警察からセルジュのこの35年間の行動の真実を知らされて、愕然とするエンディングまで丁寧な演出で手を抜かないストーリー展開はなかなか見応えがありました。秀作と呼べるほどの作品とは思えませんが退屈はしませんでした。