くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「教授のおかしな妄想殺人」「二ツ星の料理人」「エクス・マ

kurawan2016-06-13

「教授のおかしな妄想殺人」
ウディ・アレン監督の軽妙なブラックコメディ。さすがにウディ・アレンの語り口は実にうまいし、リズミカルである。背後に流れる音楽センスも抜群、さらに、映像センスの良さは今更であるが、大したものだと思う。

癖のある大学教授エイブがアメリカ東部の大学にやってくるという噂が流れるところから映画が始まる。画面はその教授が車の運転をしているシーンから開巻する。

様々な憶測が飛び交う大学のキャンパス。ここに一人の女子大生ジルがいる。彼女は恋人と普通の大学生活を送っていた。そこにやってきたエイブ、彼は人生の意味を失い、恋人との関係も冷めていた。しかし、その独特の個性がジルの心を捉えた。

ある日、エイブとジルが食堂にいる背後で、悪徳判事に困っているという会話が聞こえる。偶然がもたらした偶然の思いつきから、エイブはその悪徳判事を殺す計画を立て始める。そこから、彼の人生はみるみる活気付いてくるのだ。

ジルとのデートで、遊園地に行くシーンはさすがにウディ・アレンならではの映像が光る。キラキラ輝く遊具のネオン、そして、そこで景品を取るとルーレットをして、見事的中、エイブはジルに景品を選ばせる。選んだのは、コンパクトな懐中電灯。なんと、これがラストの伏線になるのだから、ストーリーテリングのうまさに脱帽してしまいました。

エイブは青酸カリで判事を殺す計画を立て、朝、判事がジョギングするところで一休みするベンチの横に座り、あらかじめ用意した青酸カリ入りジュースをすり替えるのだ。青酸カリは、エイブの恋人のバッグから大学の薬品庫の鍵を盗み手に入れた。

そしてまんまと、殺人が成功。最初、警察は判事の死を心臓発作としていたが、解剖の結果毒殺と判明。一方、殺人に成功したエイブはジルを含め、様々なところで、判事の死についての憶測として、毒殺を匂わせていた。

まさかと思っていたジルは、薬品庫で偶然エイブに出会ったという知人や、エイブの恋人から鍵をなくしたなどの偶然を聞くに及び、さらに、警察が別の犯人を見つけたというニュースを知るに及び、確信し、エイブに自首を進める。

エイブは、一人殺すも二人殺すも同じという考えに及び、自首を勧め、自首しないなら警察に連絡するというジルを殺すことを決意、エレベーターを細工して、突き落とすことにする。そして、ジルのところに行き、エイブは無理やりエレベーターのドアからジルを落とそうとするが、ジルのバッグから落ちた懐中電灯に滑ったジルは逆にエイブを落とすことになってしまう。

全く、見事な物語の組み立てである。お話はかなりの犯罪映画なのに、語り口は実に軽いタッチで、軽快。この空気はウディ・アレンでないと出せない。見事というほかない知的センス満載の一本でした。面白かった。


「二ツ星の料理人」
余計な人物背景を一切排除して、映像とストーリー展開だけで見せる演出を徹底したために、無駄なく最後まで楽しむことができる。ある意味、オリジナリティ溢れる一本という感じの佳作でした。監督はジョン・ウェルズです。

パリで二つ星のレストランのシェフアダムは、その店のオーナージャンと店をしていたが、ふとしたことで店を飛び出す。その時に、同僚のシェフも含め、恨みを買ったまま、3年が経つ。そして彼はロンドンのトニーの店を訪れる。そして、様々な画策をして、その店にシェフと入らざるをえなくする。さらに、目に付いた料理人や、かつての同僚で腕の立つ人間を次々と集めて、そのレストランに雇う。ここまでの展開がとにかくスピーディでもあるが、荒っぽいので、何が何か、集める人々がどれほどのものか全く見えないのだ。

そして、アダムはトニーと店を再開業、人間関係の確執も、こなしながら成長していく。そしてある日、ミシュランの調査員らしい人物が来店、気負いしながら、料理を出したアダムだが、なんと、彼が呼び寄せた同僚の中に復讐の機会を待っていた黒人がいて、彼に唐辛子入りのソースを作られ失敗。アダムは自暴自棄になる。これがちょっとありきたりの展開なのが惜しい。

しかし、トニーの調べで、来たのはただのセールスマンだったことがわかり、さらにアダムがよび入れた料理人も次第に腕を上げてくる。そして時が経つ。再び調査員らしい人物が来る。しかし、今度のアダムは気負うことなく今まで通りの料理を出す。結果はわからないまでも、そこには人間として成長したアダムの姿があった。暗転。

アダムが集める人物や、彼につきまとう回収屋のような人々がどういう経緯か全く説明シーンがない。ジャンの娘とアダムのことも、何気ない会話で説明されるが、それ以上はない。そのあたりのそぎ落としが、気になり出す時になるが、これは演出スタイルと割り切ると面白いのだ。

出だしからラストまで、特に好きな物語でもないのに、退屈せず見ることができた。ただ、特に感動もなかったという一本でした。


エクス・マキナ
アカデミー賞脚本賞、視覚効果賞ノミネート作品。スタイリッシュな映像のSF映画であるが、その辺りの目新しさは今では珍しくない。監督はアレックス・ガーランドである。

主人公ケイレブはブルーブック社という最大の検索サイトの会社に勤めている。自分のデスクでパソコン画面を見ているシーンに始まり、あなたが当選したという案内が届く。どうやら、社長の別荘への招待状らしい。そして彼はヘリコプターに乗り、広大な山々に囲まれた敷地の中にある別荘にやってくる。彼はそこで、ネイサン社長からAIロボットエヴァを紹介されるのだ。

ネイサンは極秘でAIロボットを製作し、ケイレブにそのロボットがいかに人間に近いかの実験をしてもらうつもりで呼んだのである。ネイサンはエヴァと会話をするうちに、その完成度の高さに驚くが一方でネイサンの計画が恐ろしくなってくる。

ある日、ネイサンが酔いつぶれた隙に、彼のカードで彼のパソコンに入り、彼が行っているAIに対する異常な計画を知り、エヴァを連れ出して脱出する計画を立てる。ネイサンは人工知能を書き換えながらロボットを作り変えていたのだが、ロボットに過度に感情移入したケイレブにはそれが異常に見えたのである。

一週間後のヘリの迎えの日に、ケイレブは計画を実行しようとするが、それはネイサンにばれていて、それでもケイレブの書き換えたプログラムでエヴァは部屋から外に出る。しかも、阻止しようとしたネイサンを殺してしまう。さらにケイレブも閉じ込め、エヴァは迎えのヘリに乗って脱出してエンディング。ある意味B級映画的な色合いもある一本ですが、ストーリー自体はそれほど目新しい展開でもなく読めてしまう。背後にあるメッセージを読み取ればいいのかもしれないけれど、正直、前半はちょっと退屈でした。