「ガンズ&ゴールド」
100分ほどしかない映画なのに、やたら長く感じる。見せ場というところに焦点を当てた演出がなされていないために、全体が淡々と進んでしまうのである。監督はジュリアス・エイバリーという人である。
クライマックスのターシャとJRの策略が表になる場面は、この作品の見せ場なのだが、そこに盛り上がりも、どんでん返しのサプライズ見えない。ふつうに、こういう展開かと思わせてしまうのである。
さらに、エピローグの金塊を墓場に埋めて、ブレンダンに手紙で知らせるシーンも、とってつけたようになってしまうのだ。
物語としてはおもしろいし、エピソードもいろいろ詰め込んであるので楽しめる。なのにもったいないのである。
映画はJRが刑務所に収容されるところから始まる。初めてのことでドギマギしているが、チェスの知識があり、たまたま外の友人サムとチェスをしていたブレンダンと知り合う。彼は25年の刑務所暮らしで、JRを守る代わりに要求を聞いてくれと持ちかける。
先に出所したJRはブレンダンの脱獄を手助けし、彼の仲間と友人のサムのところへいく。そこでJRはターシャという女性と知り合い、恋に落ちる。一方サムはブレンダンに金塊強奪の計画を持ちかけ、見事成功するが、サムはブレンダンを裏切る。
結局、ブレンダンはサムを倒し、金塊を独り占めするべくJRも切ろうとするが、予測していたJRはターシャと組んで、ブレンダンをおとしめ、ブレンダンは逮捕されてしまう。
JRは自分の金塊の分け前を手にし、残りをブレンダンに渡すべく墓場に埋める。
お話はなかなか見所がたくさんある。脱獄から金塊強奪へのサスペンス、警察とのカーチェイス、サムやブレンダン、JR、ターシャらとの頭脳戦など盛りたくさんなのだが、演出に切れと盛り上がりがないために、淡々とラストシーンへ流れるのだ。ユアン・マクレガーが悪役ということで見に行った一本だが、ふつうの映画だった。
「終電車」
35年ぶりに見直した。初めてみたときは、それほどの感動を覚えなかったが、さすがに大人になったのか、この映画のすばらしさと、物語に感動、ジョルジュ・ドルリューの名曲に胸が熱くなってしまいました。
なんといっても、カメラワークが抜群にすばらしい。現実の世界を舞台劇のような構図でとらえ、カメラは縦横に移動しながら人物の台詞をとらえていく。
時に外のシーンも描かれるが、ほとんど舞台上の映像のごとく見える。そして、ネストール・アルメンドロスのろうそくの明かりに近いほのかな陰影で見せる映像もまた見事なものである。
映画は、ベルナールが街路で一人の女性に声をかけるシーンに始まる。何度も何度も声をかけるベルナールをいなす女。カメラは二人を抜きつ戻りつしながらとらえる。このファーストシーンもすばらしい。時は1942年、ドイツがフランスに侵攻してきている。
物語はモンマルトル劇場の女優マリオンが、劇場を守るために奔走するお話である。夫ルカは演出家でユダヤ人であるために、劇場の地下に隠れている。まるで「オペラ座の怪人」である。
排気管を通じて舞台の稽古の様子を聞き、メモを託して、舞台を演出している。そして、そこにマリオンの相手役としてベルナールが入り、やがて舞台は大成功を納める。
しかし、ベルナールはレジスタンスでもあるため、舞台の傍ら、仲間との連絡を取ったりしている。ドイツ人を極端にいみきらうのだ。
やがてマリオンとベルナールはいつの間にか恋に落ちていくのだが、映画は劇中劇の舞台と、現実の物語、ルカの隠蔽生活を描いていく。
やがてドイツの敗戦に向かい、一時マリオンとベルナールは溝ができるが、最後に二人が舞台に立っている姿で映画は大団円を迎える。激動の時代をその気丈な性格で乗り切っていくマリオンの姿、ベルナールとの恋、すばらしい音楽に乗せて描かれるドラマはまさに一級品。すばらしかった。