くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ロングエンゲージメント」


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まるで絵画を見ているような美しい場面と構図の中で物語は散文詩のような展開を見せていきます。
でも、その物語の根底には、愛する恋人に対するヒロインのあまりにも強い信念と意志が貫かれています。

アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ監督、オドレイ・トトゥ主演の「ロング・エンゲージメント」はそんな作品でした。

前作「アメリ」は当初は劇場で見ることができず、深夜放映していたテレビで見てその映像のすばらしさに衝撃を受けたのですが、今回の「ロング・エンゲージメント」もその宣伝フィルムを見たときからワクワクしていました。

戦場シーンが多々出てきますが、冒頭のキリスト像が半壊しぶら下がっている下りから、随所に見られるややおぞましいほどの殺戮シーン。爆弾で人肉が細切れになって飛び散ったり、吹き飛ばされたりと個別に見ていくとかなりグロテスクともいえるシーンもあります。

しかし、それが本当に美しく色彩を押さえた見事な構図の中で描かれているためにグロの世界に見えない。ただ戦争のむごさだけが印象に残るのです。
しかし、反戦映画ではありません。その微妙な境目をわきまえた天才的なストーリーテリングには頭が下がります。まさにジャン=ピエール・ジュネの面目躍如ですね。

そしてお得意のCGを使った見事な効果の数々、それはリアル感を出すために使うのではなく、作品の芸術性を高めるためにのみ使用する才覚は見事。

オドレイ・トトゥはさすがに「アメリ」よりもやや老けたように思えますが、あの独特のほほえみが物語のサスペンス色を盛り上げるようでまさに適役ですね。

なんと言っても圧巻は幼い頃のマチルドとマネクが灯台に上って景色を眺める場面の前後の縦横無尽のカメラワークでしょう。
俯瞰でぐるぐる回っている灯台の階段を映したかとおもうと、大きくクレーンのような灯台を不堪で撮る。

はしゃぐ二人の姿を延々とつなぐ場面は息をのみますね。

戦場シーンはややモノクロ調に色を殺し、現代の風景はややセピア調に色を落としての表現は、まるで動く油絵を見ているような錯覚さえ覚えます。

ただ、滅多にこないフランス映画、俳優さんの名前や配役の名前についていけないところもあります。
まして、この作品は戦場で死んだと報告された恋人の死を信じないで、その謎を解いていく謎解きのストーリーなので、特に途中は厳しかった。

しかし、クライマックス、今までの細切れの場面が一人の男の語る物語で次々と一本のストーリーにつながっていく下りはもう感動。
そしてラストシーン、あまりに悲しいながらもどこか、「ああよかった」と思えるような感動を私たちに呼び起こしてくれました。

期待通りの作品。よかった