くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「殺されたミンジュ」「メニルモンタン 2つの秋と3つの冬

kurawan2016-01-26

「殺されたミンジュ」
キム・ギドク監督らしい暴力シーン連続ではあるが、今回どこか甘さが見えるのは気のせいでしょうか?

一人の少女が夜の街を逃げるシーンに映画が始まり、何やら男たちが少女を追いかけ、捕まえて、あっという間に殺してしまう。そしてボスらしい男に報告しているカット。この導入部のインパクトはさすがに度肝を抜かれる。

そして1年後、一組のカップルが食事をしているシーン、そして別れた後、男の方は、何者かに連れ去られ、拷問の末に、1年前の少女殺人の自白を書かせて解放する。

次の実行犯、次の実行犯と捕まえては拷問して自白させるが、二人目の男は自殺してしまう。拉致する男たちは毎回、軍服姿やヤクザ姿などに着替えて行動するが、主謀者以外は、社会で蔑まれ、不満のたまった若者で、面白半分である。

一人目に拷問された男が、この集団を追いかけるという物語も並行する。しかし、この拉致実行犯の存在感に迫力がない。面白半分な奴らは、最初から及び腰だし、主謀者だけが一人相撲に見えるのである。しかも、冒頭から、すぐに主謀者に反抗するし、女のDV彼氏は、最初以降存在がほぼ消える。

周辺の登場人物はおざなりになっていることと、集団に不気味さが弱い、最初の殺人組織も怖さがない。結局、拉致集団の主謀者は冒頭殺された少女の父親らしく、ではなぜ彼女が殺されたかというのは結局明らかにならない。

拉致集団を追いかけていた最初に拷問された男は、終盤で、自ら軍服を着て、拉致集団首謀者を殴り殺す。

前半は、さすがに引き込まれていくのだが、すぐに崩壊していく組織の弱さと、背景の不気味さ不足、さらに実行理由の曖昧さが映画全体をぼんやりさせてしまった感じです。キム・ギドク監督、今回は残念な出来栄えだった気がします。


「メニルモンタン 2つの秋と3つの冬」
ちょっとおしゃれな映画かなという期待をしたフランス映画ですが、1つ1つのシーンをその登場人物がカメラに向かって説明するという演出スタイルで繰り返す映像は、ちょっと私にはしんどかった。監督はセバスチャン・べべデールという人です。

美大を出たものの、悶々と暮らす主人公アルマンは、一大決意でジョギングを始める。その途中、同じくジョギングをするアメリと出会い一目惚れ。しかし、最初の出会いから再開もなく悩んでいるところに幸運の再会が訪れる。アメリが不良に絡まれてあげた悲鳴が、たまたま近くにいたアルマンが聞きつけ、結果的にアメリを助けたのである。

こうして二人の恋物語がスタートするのだが、最初にも書いたが、シーンごとに人物が語りかける説明が繰り返されるので、面倒になってくる。

さらにアルマンの友達バンジャマンが絡み、周囲の人々の物語が加わってくると、細かいシーンごとの説明に、疲れてくる。もちろんこれも演出手法なので否定するわけではないが、全体の流れがリズムを産んでこないので、飽きてくる感じなのです。

アメリが妊娠し、中絶するくだりも、すべて説明で語られ、アルマンとアメリの感情の行き違いも、すべて説明される。周囲の人たちのアルマンたちへのかかわりも説明で済まされるのがなんとも物足りないと思うのです。

とは言ってもフランス映画らしいほのぼのとした空気は、ちょっとロマンティックな色合いを見せてくれるし、エンドクレジットで流れる音楽も素敵なので、その意味では、愛くるしいラブストーリーだったかと思います。