くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「戦争のない20日間」「道中の点検」

kurawan2015-04-14

「戦争のない20日間」
アレクセイ・ゲルマン監督作品の一本。休暇をもらった戦場記者の20日間を描いた作品ですが、先日の「神々のたそがれ」でも感じましたが、この監督の映像は、なかなかのものだと思います。

物語は、浜辺で、戦地を取材する主人公のシーンに始まる。彼方から爆撃機が飛んでくるオープニングが、実に映画の舞台を的確に表現している。

やがて、休暇が与えられることになり、汽車でふるさとに戻る。駅の場面、妻との再会、近隣に人々との再会などのエピソードに、木々を効果的に配置したり、奥行きのある群衆のカット、崩れ落ちる壁を背後にしたスペクタクルな映像表現など、どれも、美学が徹底されている。

時に、戦場の場面がフラッシュバックされたりし、懐かしいワイプによるシーン転換などもみられ、幻想的な色合いも交えてくる。

そして、20日間の休暇が終わり、再び戦地へ向かう主人公たち。途中で爆撃にあい、爆弾がつぎつぎと周辺に落とされる映像から、やがて地平線の彼方に消えるラストまで、横長の画面がとにかく美しい。

お話は地味ですが、この監督の才能を感じうる一本だったと思います。


「道中の点検」
アレクセイ・ゲルマン監督のデビュー作だが、これはなかなかの秀作だった。画面の絵作りといい、ストーリー構成の良さといい、スピード感溢れる演出といい、クオリティの高い作品でした。と思ったら、以前見ていたのをすっかり忘れてみてしまった。
映画は第二次大戦真っ只中、ドイツ軍がソ連領内でジャガイモに油をかけているシーンに始まる。広がる雪景色と枯れた木々の配置が美しい。

1人の兵士ラザレフが、井戸で水を組んで飲もうとしていると、後ろからパルチザンの兵士に咎められ、頼りないパルチザンだったが、ラザレフは自ら投降する形で捕まる。かれは、ドイツ軍に寝返って働いていたが、もう一度パルチザンに戻り、戦いたいと告げる。

こうして、ラザレフという男を主人公に物語が進む。彼を信用できないパルチザンソクーロフが何かにつけ突っかかってくるが、次第にラザレフの行動に周りが信用を寄せてくる。結局、ラザレフを試そうとした作戦でソクーロフは死んでしまうが、これで、ますますラザレフは信用を得ていくのだ。

捕虜として捉えられたラザレフたちのパルチザンの所へ、雪煙の中から、ドイツ兵が横一列に現れてくるシーンや鉄橋を爆破するべく待ち構えるパルチザンの前の運河に、びっしりと捕虜を乗せたドイツ軍の船が潜っていくシーンなど圧巻の美しさである。

クライマックスはドイツの食料列車を奪還する任務で、ドイツの兵舎へ四人で乗り込み、列車を奪う場面。必死で作戦遂行を助けるラザレフだが、最後に飛び乗るはずが、置いていかれ、やがてドイツ兵に撃たれ、線路上で死んでしまう。彼方に走り去る列車、広がる雪原、画面に配置される人々のカットも美しい。

エピローグとして、戦争が終わり、パルチザンの兵士も、ドイツから取り戻した都市を凱旋するシーンへ続きエンディング。

物語の展開のスピード感と映像の美しさが秀でた秀作でした。