リュック・ベッソンが脚本を書いた期待作。
殺人マシンとして育てられた男が盲目のピアニストに出会うという物語だけでも心が引かれると言うものであるのに、その殺人マシーン役がジェット・リー、ピアニスト役がモーガン・フリーマンとなれば見に行かざるを得ないだろう。
ということで本日見に行ってきました。
冒頭シーン、タイトルバックの背景にジェット・リーが獲物をにらみつけるような世古賀を賀移され、その動物的な表情で、彼の素性が見事に観客に説明されます。
グレーブルーの押さえた色調で描かれる殺人マシーン、ダニー(ジェット・リー)の生活と境遇。
端的に描いていく中に、人間ではない生き物と化している彼の姿が見事に映し出されています。
いきなり、狂ったように人を殺していくダニー、その行動のきっかけはボス(ボブ・ホスキンス)が彼の首輪をはずして「殺せ!」と命ずるいわば暗示のような命令。その言葉で彼は理性も感情も捨ててひたすら向かってくる敵を執拗なまでにたたきのめします。もちろん、死ぬまで、あるいは死の直前まで。
この出だしのシーンは目を背けたくなるほど陰惨です。まさに、人として育てられていない彼の生い立ちがまざまざと観客の前に暴露されるのです。
まるで、印画紙を反転させたような色彩映像が、さらにその冷酷さを彼の今の生活の殺伐とした状況をスクリーンに表現しています。
しかし、このプロローグは非常に手短に次の場面に展開していきます。
次の場面で、とある倉庫で合図を待てといわれる彼の前には古びたピアノが。それをじっと見つめる彼の目には明らかに人の目が、いや人の目の光が輝きはじめているのがかいま見えてきます。
ここで、盲目のピアニスト、モーガン・フリーマンが登場する。
ここから物語はピアニストの家族との暖かい生活と、すぐに引き戻される殺人マシンとしての生活が絶妙のタイミングで入れ替わりながら展開していきます。
ピアニストとの生活場面では暖かい茶系の暖色の色調を中心にしたほのぼのとした画面づくりを行い、ひとときのダニーの心の安らぎを見事に表現しています。
この場面が一方の殺人マシンとしての生活の場面との対比で作品が非常に厚みを加えています。さらにカメラのパンで入れ替わっていく過去の場面や物理的な異動の場面などが重なって、このルイ・レテリエ監督のただならない才能をかいま見ることもできるのです。
少しずつ人間の心を呼び起こしていくダニーのおどおどした視線に演技がもの悲しくも切なくてこの作品のテーマを見事に表現してくれます。モーガン・フリーマンの笑顔の暖かさ、ヴィクトリア(ケリー・コンドン)の純粋な愛情がさらにストーリー展開に変かと深みを与え、少しずつ減っていくボスとのシーンがラストシーンでついに一つに重なり合ってクライマックスを迎える下りは最高でした。
合間合間のジェット・リーのアクションはさすがに本物の迫力で無駄がないし、周りの俳優陣の演技も彼の存在をしっかりフォローしてぐいぐいとストーリーを進めて行くし、久しぶりに洋画の秀作を見たという感じでした。
ラスト、ジェット・リーの涙の意味するものは・・・・
おすすめ作品ですね絶対
ダニー・ザ・ドッグ オリジナル・サウンドトラック(CCCD) サントラ |