くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「わるい仲間」「サンタクロースの眼は青い」「ぼくの小さな恋人たち」「エドワード・ヤンの恋愛時代」(4K)

「わるい仲間」

青春の一ページという感覚のどこかみずみずしさを感じられる作品で、手持ちカメラと固定カメラを併用して街に出た映像が心地よい一本でした。監督はジャン・ユスターシュ

 

友達のジャクソンが待つカフェに友人がスクーターでやってくるのを俯瞰に捉えて映画は始まる。街でナンパしようと言うことになって出ていく。ダンスホールに行くと言う一人の女性に声をかけてダンスホールに行くが、女性の友人はいなくて三人で別のダンスホールへ向かう。しかし、女性は別の男性と踊り、ジャクソンと友人は女性にバックから財布を盗んで店を出る。

 

財布の金で酒を飲み、適当に遊んでしまうが、中の写真などを見て財布を返すことに決める。翌日、指紋などを拭き取って郵便で財布を送り、ジャクソンと友人はスクーターに乗って走り去って映画は終わる。

 

たわいない映画ですが、夜のパリの情景が美しいし、さりげなく描かれる二人の行動を捉えるカメラ視線がどこか心地よい映画でした。

 

「サンタクロースの眼は青い」

ゴダールの「男性、女性」の使わなかったフィルムを使用して、ボイスオーバーで物語を作り上げていく作品で、こちらも、青春の一ページ風の映画でした。監督はジャン・ユスターシュ

 

ダニエルと友人のデュマが歩いてくる場面から映画は始まり、街で女性に声をかけ、友達を探そうとする。なかなかうまくいかない二人だが、ダニエルがたまたまサンタクロースの衣装を着て街で子供と写真を撮るバイトにありつく。しかし、サンタの格好をしていると女性たちが無防備に彼と体を接してくれることに気がついたダニエルは、次々と女性に声をかけ、一人の女性を夜のデートに誘う。

 

待ち合わせ場所でダニエルはその女性にキスをし、体を触ろうとするが、サンタの格好をしていないと即座に拒否されて振られてしまう。クリスマスカードのくじを売るバイトをし、やがて新年を迎える。街で友達と会い、女を買いに行くぞと叫びながら夜の街に消えて映画は終わる。

 

夜のパリ、小遣いを稼ぐ若者たちの姿などを、さりげないカメラワークで繋いでいく映像が爽やかな映画で、これもまた夜のパリの風景が美しい。短編ながら心に残る映画でした。

 

「ぼくの小さな恋人たち」

監督自らの少年時代を映像に昇華させていく感じの作品で、淡々とした物語ですが不思議なくらいに身近に感じて引き込まれてしまいます。フランス郊外の風景が懐かしい思い出を映し出していくように感じる素朴さがとっても素敵な作品でした。監督はジャン・ユスターシュ

 

柔らかな歌声をバックにタイトルが流れ、聖体拝受をしにいく主人公ダニエルが、道ゆく女性に声をかけて自転車で走り抜けて映画は始まる。聖体拝受するのに順番に並んでいるダニエルだが、なぜか股間が硬くなり前を歩いている少女に体を押し付けてしまう。ダニエルは祖母と二人暮らしらしい。村で幼馴染だろうか友達と戯れ、やってきたサーカスを見にいく。サーカスの真似をしてみたり、木に登ったりする日々。ダニエルの母がある日一人の男性を連れてやってくる。

 

ダニエルは母のもとに行くことになり祖母のうちを離れる。高校へ進学するつもりだったが、母に諭されて、母の町で修理工の仕事に就く。その街で上級生たちと知り合い、日々女の子を追いかけたりする毎日だが、次第に大人の世界に近づいていく。映画はただひたすらダニエルの日常を捉えていくだけだが、全く退屈しないのは、どこかに自分の懐かしい日々を共有して感じ取るためかもしれない。

 

隣町に女の子を探しに行ったダニエルたちは、そこで、一人の少女と出会いキスをする。今度の日曜にまたデートしようと誘われるが、ダニエルはその日祖母の家に戻る予定だった。祖母の家に戻ったダニエルの前に幼友達が訪ねてくる。ダニエルは彼らと森へ行く。どこか、ダニエルより幼く見える彼らと一緒になって、ダニエルはなぜか落ち着いて遊べる気がする感じがして映画は終わる。

 

落ち着いたカラー映像、特に劇的な展開もない物語ですが、かつての自分達もあんなだったような錯覚に囚われてしまう心地よい映像作りがとってもいい感じの作品で、もしかしたら、すぐに忘れてしまいようなお話ですが、見た感覚がいつまでも心に残る魅力があります。とってもいい映画でした。

 

エドワード・ヤンの恋愛時代」

めちゃくちゃ良かった。並外れた会話センスの演出と映像展開にどんどん引き込まれていきます。恐ろしいほどのセリフの応酬と交錯して行く恋愛関係に一瞬翻弄されるのですが、繰り返されるセリフに仕込まれた人物関係の描写が、みている私たちを混乱させることなく、それでいて、さりげない友情や大人関係、芸術への視点など、細かい脚本に圧倒されてしまいます。ワンランク上の傑作でした。監督はエドワード・ヤン

 

1990年代の台北、経済成長著しい中、モーリーの経営する会社は苦境になっている。財閥の令嬢で、親が決めた結婚相手アキンの援助もあって、ワンマン経営を続けるモーリーの元に、次の台本を持ち込むバーディ。しかし、今度の本はかつて大ヒットした恋愛劇ではなくて、自身が本来やりたかった堅苦しい内容、さらに会社の経営状態について追求するラリーの言葉などにキレまくるモーリーの場面から映画は幕を開ける。

 

親友で常に笑顔で尻拭いをしているチチには恋人のミンがいる。映画は、モーリー、チチ、ミン、アキン、さらにラリー、ミンの父、会社が育てている女優のフォン、ら十人が絡んでの恋愛劇と、会社運営のいく末が二転三転んしていく様の二日半を描いていく。機関銃のように会話が応酬され、それに合わせて、次々と恋愛関係が入り組んで相手を変えていく。そこには、若者の結婚観の変化、目指す目的を見失っていくあまりに早い時代の流れ、などが見事に描かれていく。

 

モーリーの姉はテレビキャスターらしく、今の夫バーディとは恋愛結婚を貫いたために、親が決めた結婚相手のアキンは妹のモーリーに移った経緯のようである。

 

やがて、モーリーとチチの友情関係さえ破綻し、ミンはついモーリーと一夜を共にしてしまい、バーディは次回作を模索する中で死を覚悟する。ミンとチチの関係も破綻したかに見え、モーリーに会社解散を言い渡すようにラリーはアキンに忠告する。アキンはたまたま立ち寄ったバーディの芝居に稽古場で、ひたすら掃除をする役者の卵と出会う。

 

やがて夜が明け、モーリーが早朝の会社で過ごしているとチチが現れる。二人は友情を再確認し、そこへアキンが現れ、本当の恋を知ったから婚約を破棄しようと言う。モーリーはアキンに会社を譲ると伝える。チチの元にミンの父が倒れたと連絡が入り病院へ行く。ミンも駆けつけるが、集中治療室で面会できない。

 

ミンの父の今の妻がチチの前で落胆するところへ危機を脱したと言う医師の知らせが届く。ミンはエレベーターでチチにはっきり別れを言って、また友達としてカフェでお茶でもしましょうと言ってミンはエレベーターに乗りチチも去っていく。しばらくして、もう一度エレベーターのドアをミンが開けるとそこにチチがいて、今からカフェに行きましょうと微笑んで二人が抱き合って映画は終わる。

 

チチの髪型が「ローマの休日」のヘップバーンカットになっていて、ラストで真っ赤なワンピースに変わっていたり、フォンの衣装がスリムなパンツだったり、モーリーはショートヘアの勝気な姿でポルシェに乗っていたり、ラリーがメガネをかけていかにも生真面目だったり、バーディが長髪で芸術家肌だったり、ミンの父がいかに実業家風だったり、とキャラクターの色分けも見事な上に、さりげなく挿入される音楽もセンスが良い。とっても素敵な恋愛コメディだった。楽しかった。