角川春樹が戻ってきた。
かつて角川映画なるブランドまでうち立て、名作、大作を世にはなってくれたプロデューサー。
そしてコンビを組んだ監督はやはり佐藤純弥。あの「人間の証明」の名コンビだ。
戦艦大和といえば私たちの年代では、あこがれのようなものである。もちろん戦争は知らないし、本物を見たこともないが、世界一の戦艦、伝説の巨艦、悲劇の大戦艦として、プラモデルで一度は作ったことがあるものだ。
そして、戦後60年を記して角川春樹が放った映画「男たちの大和」、久しぶりに角川大作映画を見たという充実感に浸っている。
広島に作られた実寸大の大和をつくってのシーンは圧巻というほか無い。CGでも描けたかも知れない。しかし、あえてセットにこだわったスタッフに感謝したい。
物語は戦艦大和の生き残りの老人が語る回顧談として進んでいくが、ほとんどの場面が大和の中での様々なドラマ、当時の時代背景、それぞれの乗組員の人生を丁寧な描写で描かれていく。このあたりは人間描写に定評がある佐藤純弥監督ならではの腕の見せ所である。
あくの強い中村師童ほかキャストも個性的なしかも誰もが作品を一人で引っ張っていくほどの力量の持ち主ばかりを採用しているにもかかわらず、誰に重点を置くこともなく、そして誰を粗末にすることなく、大スペクタクルな物語のなかで見事に生かし切っている。一番驚いたのは、テレビではそれなりに生きてくる反町隆史、果たして主役級の存在として登場するこの大作で存在感を出しうるか心配であったが、見事に生きているのである。見ていてうれしくて、画面に食い入ってしまった。
なんと言っても見せ場はクライマックスの九州沖で米軍機に総攻撃され壮絶な戦いを見せ留場面であろう。
このシーンがあれほど生き生きと迫力あるシーンに仕上がったのは佐藤純弥監督の演出手腕もさることながら、CGにせずセットを作ったことに尽きるのではないだろうか。あっとされる迫力、飛び散る血潮、炎、人々の動きが迫ってくるのである。ただただ圧倒。これぞスペクタクル、これぞ壮絶な悲劇。目を見張るシーンとはこのことであろう
やがて沈んでいく大和、そこのは哀愁はあるものの、ありがちな搭乗員たちのお涙ちょうだいシーンは極力抑えられている。そのあたりが非常に好感であった。
しかも、戦後60年記念作品とはいえ反戦テーマを押しつけるようなくどさもない。ただただ、この作品を見て私たちそれぞれが考えてほしいと問いかけてくるのである。そして、その問いかけが必要であるために架空のCGで大和をよみがえらせず、出来る限り本物をという信念から実物大セットというとてつもないことをやってのけたのだ。
良かった。ただ、一人でも多くの人に見てほしい大作であった。
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