くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「山桜」

山桜

藤澤周平原作作品となれば、よほどの理由がなければ行かないのですが、なんせ、田中麗奈さんが初時代劇ということで、かなり注目していたので、見に行きました。

監督は2000年に田中麗奈主演で「はつ恋」を監督した篠原哲雄。あの作品もそうでしたが、美しい自然を背景に淡々と描く作風はまさに藤澤周平原作時代劇にぴったり。本当に静かな日本の原風景が作品を本当に美しくしています。

不幸な結婚で日々を送る主人公野江(田中麗奈)のけなげな中にに強さの光る姿、一方でかつて野江に縁談話があったが、結局結婚に踏み切らなかった物の未だに密かに思いを寄せる正義感に燃える武士(東山紀之)。この二人のドラマを主軸に、とにかく、静かそのものの、しかし、どこか本当の日本的な姿を見せる秀作になっています。

主人公達やその周辺の俳優さんたちの仕草が本当にきれい。それは時代劇の考証通りといえばそれまでですが、今や忘れ去りつつある本当の日本の美しいしきたりが見事に緻密かつ詳細に再現されています。

初時代劇に望む田中麗奈が一生懸命チャレンジしているのが手に取るようにわかるし、東山紀之の立ち居振る舞い、殺陣それぞれが本当にりりしく、ほとんどせりふがないにも関わらず見事な存在感を見せています。

コミカルでモダンな役柄がほとんどの田中麗奈ですが、この作品ではとにかく芯は強い物の昔ながらの女性を演じている。美しい落ち着いた色彩の着物に身を包み、山桜の木や舞う花びらを背景に静かに歩く姿は何ともいえなく美しい。

派手なCGが乱舞する最近公開の時代劇ですが、自然そのままのまるで散文詩のような時代劇に思わず、日頃の喧噪が消えていく感じがしました。

ラストシーン、どこかしら希望が見えてくる様子をただ、なんの演技もシーンも亡い中でクレジットロールにつながるあたりはこの作品のいいたいことを見事に物語っているというしかありません。
見終わって、いい映画だったなぁと思える映画、そんな秀作でした