くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「警察日記」

警察日記

森繁久彌日活初出演映画。
名作とされている作品で、その名の通り、淡々とした日常の中に時代を切り取ったクールなエピソードが満載、しかも美しい会津磐梯山の景色をバックに、ちりばめられた物語が一つにまとまっていくラストシーンの美しさに完成度の高さを実感する秀作でした。

東北の田舎の警察署を舞台に、その警察署に巻き起こる、捨て子事件、万引き事件、人身売買事件、など貧しい農村の、しかも1955年当時の時代背景を的確に捉えた事件が、さりげない日常のごとく描かれていきます。あまりにもさりげないために、見逃してしまいそうなエピソードながら、よく考えれば非常にシリアスな時代風刺です。

そんな街の雰囲気を暖かい人間ドラマを交えながらクールに描く久松静児監督の手腕は昨日の「神阪四郎の犯罪」と比較するにまさに職人芸の世界です。

山々の景色がずーっと背後に広がるショットの美しいこと、さらにススキの中を走り抜ける三国連太郎のシーンのファンタジックなこと、そして、木村威夫の美術セットの見事なこと。やはり映画産業全盛期の作品は今と格が違うと十kzんしてしまいます。

それぞれのエピソードが収まるべくしてハッピーエンドに閉じられる物の、どこか残酷でさえある現実の厳しさが見事に胸に伝わってくる作品でした。