くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジェネラル・ルージュの凱旋」

ジェネラル・ルージュの凱旋

チーム・バチスタの栄光」のコンビの第二段を見る
とにかく、よかった。非常に緻密な脚本の面白さ、前作が謎解きのクライマックスで終わらせた面白さでしたが、今回はそれに続く現代的なテーマ性を前面に押し出し、堺雅人という名優の存在感でぐいぐいと引っ張っていく秀作でした。

本来、私の映画の見方は映像表現とか、カメラワークとかを重視し、物語は二の次にして見るのですが、今回はその物語に圧倒されてしまいました。

それぞれの脇に登場する登場人物(たとえば島田久作のリハビリ士や沼田准教授の助手の描き方などなど)についても決して無駄にすることなく物語の中で、ワンポイントのスパイスとしてラストに生かすあたりの緻密な構成。そして、謎が明かされ、すべてが終わったあとの、救急シーンの迫真の場面、そしてエピローグに見せる駄目押しのウィットなどなど、非常によくできた映画でした。

沼田教授の助手のコーヒー豆の挽くシーン、その音の意味、そしてこの助手の人間性の表現のうまさ、このあたり原作にあるのかどうかはわかりませんが、音と映像になったときに効果的であることを十分に認識した上での中村義洋監督の演出のうまさ、使い方の妙味に堪能。

もちろん主人公は阿部寛竹内結子のコンビなのですが、堺雅人のジェネラル・ルージュの存在感が圧倒的に画面に迫ってくるためにお互い一歩も引けを取らない展開になる。
さらに、高嶋政伸山本太郎尾美としのりなどの存在感も決して大きすぎず小さすぎずにラストシーンに至るまでピリピリと生きている。

そんな中で、医師不足という現代的なテーマがずっしりと背後に存在し、それを舞台に謎の殺人事件が進む。もちろん、堺雅人扮する速見センター長の医療機器会社との癒着の謎解きがメインなのだが、こうした重いテーマがちりばめられているために、いつの間にか画面に引き込まれたら、すっかり物語の中の登場人物に同化してしまうのです。

クライマックスからラストシーンにかけては、いつの間にか胸が熱くなっている自分に気がつくのですから、この映画のよさは実感できますね。いい映画でした