スパイク・リー監督の最高傑作かもしれない。
第二次大戦中、イタリアで起こった「セントアンナの大虐殺」を背景に描く戦争映画。
まったく、スパイク・リー監督のリズム感には毎回うなってしまいます。
冒頭のいきなりの郵便局窓口での銃殺シーンに始まり、時にゆっくり、時にハイテンポに、そして時に手持ちカメラを挿入するかと思えば、スローモーションを挟み込む。
ゆっくりと廊下をカメラが進む先には’WELCOME’の文字のマット、中は主人公オーブリーの部屋。さらに、イタリアの町で廊下をゆっくりと進むカメラの先には、この映画のラストに重要な新聞記事、そしてそれが窓の外に投げられると、そこに座っているのが・・・
と、同じシーンを繰り返すことでこの作品の展開はこうして平行に進むものであることを暗示させます。
現代から一気に1944年にフラッシュバックし物語は本編へ入っていきます。
すさまじい戦闘シーンから、とあるイタリアの村に入り込んだ4人のバッファローソルジャー(黒人米軍)の主人公たちと、戦闘の中で偶然助けた一人の少年。
一見平和なその村は実はナチスによって包囲されている。そんな極限の中で、本国では黒人として極端に差別されている主人公たちが本当の人間らしい平等と、1人の少年を通じての人間の暖かさに触れていく。
テーマは黒人差別、さらに人種差別であると思う。それはスパイク・リー監督が常に描いてきたものであるし、そんなシリアスなテーマを見事なリズム感エンターテインメントとして結実させる演出手腕は見事である。しかしこの映画には、少年と、彼を守り続ける大柄な黒人兵士の物語とともに、もっと本質的な人間のドラマを描きたかったのではないでしょうか?その深さがこの作品の素晴らしさなのです。単なる人種差別、反戦映画にとどまらせなかったなんともいえない胸が熱くなる感動を呼ぶ展開、これがこの映画の真骨頂なのです。
銃の発射音、機関銃の連射音、爆発音、そういうアクセントの音を平坦な展開の随所に折込、淡々と進むかと思えば、観客が飽きた頃に抑揚のある場面転換を挿入するテンポのよさ、まったく、あきさせないすべを体で覚えているとしか思えないスパイク・リー監督の演出に拍手
ラストシーンには今までのすべてが、絶妙のタイミングと、無駄のないカットで一気にまとめ上げられ、それがじわりじわりと熱くなってきた感動を一気に呼び起こします。素晴らしい作品でした