くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サマーウォーズ」

サマーウォーズ

時をかける少女」のアニメ版の監督細田守の新作、期待の一本でした

タイトルと場面紹介を交錯させてのハイテンポな導入部は「時をかける少女」同様で、一気に物語の中に引き込んで生きます。このあたりのリズム感は細田監督と脚本奥寺佐渡子のなせる業でしょうね。しかも今回も物語は夏を背景に、真っ青な空をバックに展開。しかも田舎の旧家を舞台にサイバーテロを扱ったなんとも不思議な物語である。

時をかける少女」と比べる必要はありませんが、今回はちょっとオタクっぽいテーマに偏った上に、MADHOUSEらしいサイケデリックなアニメシーンの連続がクライマックスに用意してあるので、とっつきにくいと言う人もいないとも限りません。しかしながら、登場人物がとにかく元気いっぱいで青春の真っ只中を突き進むというあっけらかんとしたイメージと、全編にただよう非常に透き通った明るさが今回も大成功を収めています。

導入部から入り込んだ物語が始まると、とにかく「サマーウォーズ」の題名どおり、戦争のようにめまぐるしくストーリーが展開していく上に、面倒な人間関係よりも、人と人のつながりを描いた古風なテーマがしっかりと展開の中に見えかくれするのがなんとも心地よく、単純なテクニカルな映画に仕上がっていないのがうれしい。

扱うテーマは今をときめくネット上のテロ事件、さらにハッキングやら、軍事システムやらの堅苦しい話がどんどん出てくる上に、ラストは時間制限によるサスペンスまで用意した内容はかなりシリアスなものである。しかし、細田監督はまるで宮崎駿の童話の世界を彷彿とさせるような気楽なノリでそんな重いテーマを徹底的に笑い飛ばしていく。だから心地いい。

無性に重い緊迫感よりも、昔懐かしい古風な人間関係を大切にしなさいという作品テーマがすんなりと見ている私に伝わってくるのです。
時をかける少女」のような甘酸っぱさはないものの、どんなことも息つくところ生身の人間じゃないかといわんばかりの暖かさが最後には伝わってきて、面白い一方でジンと来る映画でした