くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「カールじいさんの空飛ぶ家」

カールじいさんの空飛ぶ家

そもそもCGアニメが嫌いな私のなのですが、宣伝のときからストーリーがよさそうだったので見に行ったしだいです。

一人の主人公、つまりカールじいさんが子供のころ将来の伴侶と出会い、悲しみ喜びを共に経験しながらやがて妻に先立たれてしまう。二人の愛の巣の周りはすでに開発が進みビル群が立ち始めている。そんな時、二人が子供時代に妻が夢見ていた南アメリカの伝説の滝への旅を思い出すのです。

そして考えたのが、なんと風船で家ごとそこまで持っていこうとするのがなんとも奇想天外というか、ファンタジック。そして、50歳を超えた私の今の人生に少なからず重ね合わせられるような親近感もあったのです。

物語は確かに前半部分は本当に美しい。妻と知り合うまでのあたりのハイテンポなつなぎと展開の見事さ、それに続くほぼセリフのない妻との幸福の日々の描写は涙を誘います。そして本編である風船旅行までは一気に持っていくのですが、いまひとつスピード感がアンバランスだったように思えました。それでも胸が熱いままに物語の確信へ入り込んでいったのです。

しかし、ここからの冒険物語は完全にディズニーワールド、というかいまだにアニメは子供のものという意識がスタッフには抜け切れていない。あっけなく南アメリカまでたどり着いたところから、幻の鳥と出くわし伝説の冒険家との丁々発止のアドベンチャーシーンがあまりにも幼稚なのです。

前半の大人のアニメとしての完成度の高さ、いや前半というより導入部ですね、に比べあまりに後半が子供向け過ぎる。確かに、その展開の中に妻に先立たれた老人のこれからへの夢と少年の物語がこころあたたまるストーリーでつづられるのですが、ちょっとファミリーを、というより子供を意識しすぎています。

そもそも、平面アニメのディズニー映画に見られた芸術的な構図や美しいシーンの数々はピクサーアニメの中にはいまだに見えてくる兆候がない。だからこそ、今回のやや大人の物語に期待したのですが、まだまだでした。

確かに、いい映画ですが、私の思っていたお話として完成してませんでした。