くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「図書館戦争」「アイアンマン3」

図書館戦争

図書館戦争
最初にこの映画の弱点、弱さを書きたい。
必要ない台詞、シーンをすべて最初からどんどん露出させていく低レベルの脚本と、薄っぺらな人物描写で、余りに安っぽく展開する前半部分が稚拙。そのため、導入部から後半に至るまでがまどろこしい。確かに、パラレルワールド的な背景を舞台に、アクションバトルの様相のなかに織り込んだラブコメの味わいという、有川浩の原作イメージを大切にしたのはわかるが、大スクリーンによる映像媒体に変える時点では、もう一工夫の脚本の練りこみが必要に思えるのです。

しかし、後半部分、格闘武術の訓練をしている岡田准一のアクションシーンを効果的に配置した戦闘シーンが実に見事。素直にどんどん画面に引き込まれてしまう。榮倉奈々の甘ったるいキャラクターの弱点をおおいかくして、ラストシーンに一気に突っ走る展開は、なかなかの一品です。これというテクニックもなく、肉弾戦の面白さで画面に釘付けにしてしまう。アクション演出を得意とする佐藤信介監督の見せ場というところでしょうか。

映画にしても、ドラマにしても、演劇にしても、描かれるのはリアリティの中にあるフィクションの世界である。従って、いくら作り話とはいえ、その背景がリアルに見えてこないと、物語の世界の入り口で立ち止まったまま入り込めない。この作品の前半部分がそれなのである。
もちろん、原作があることなので、はたして、そこまで描いているのかと思うと、それは疑問ですが、映画としてのこの作品を見るに当たり、もう少し、物語の世界にうそでもいいのでリアリティが欲しい。

図書を規制し、無秩序に排除、焼いてしまうという物語は、レイ・ブラッドベリの名作「華氏451」、さらにその映画化でフランソワ・トリュフォー監督作品を思い出さない人はいないでしょう。あの哲学的なファンタジーと比べる必要は決してないし、この「図書館戦争」という物語もひとつのストーリーとして独立するものだと思うのですが、どこか、こじんまり見えるのがちょっと残念。

欠点は多々あるのですが、後半に入って、次第に堂上と笠原のさりげないラブコメが、薄まってくるような、漂ってくるようなムードと、派手な銃撃戦のバトルシーンの混ざり具合が、薄っぺらいとはいえ、軽いタッチで流れて行くのは、どこかほほえましいほどに楽しいのです。決して、できばえの良い映画ではないかもしれませんが、映画女優としてはいまひとつの榮倉奈々とやたらポーカーフェイスの岡田准一のコラボが妙に心に残ってエンディングを迎えました。単純に楽しかったですね。


アイアンマン3
このシリーズ三本のうちで、一番しっかりとした作品に仕上がっていたのではないでしょうか。たぶん、スーツをつけるという、日本のアニメに親しんだわれわれには、いまさらという設定が、今回はあまりこだわらなかったためでしょう。やはり、「リーサル・ウェポン」などの脚本を書いたシェーン・ブラックに監督が変わったせいかも知れません。

物語は「アベンジャーズ」の戦いの後、神経的に参った主人公トニー・スタークの物語となる。ヒーローとして、バトルスーツを着て暴れまわる見せ場というより、悪役であるアドリッチが、体中が燃えるような妙な体質に変わった姿が面白かったように思う。ただ、正義と悪の対決を派手に見せていこうとするよりも、アドリッチのトニー・スタークへのうらみつらみ的な展開がちょっと物語としてはスケールダウン。そこを、前半、トニー・スタークの豪邸が派手に爆破されるシーンや、後半で、たくさんのアイアンマン出現の大バトルシーンで必死で大作然としようとするのはいただけませんね。

途中で、出てくる子供のキャラクターも、それほど生きていないし、ドン・チードル扮するローディのウォーマシーンもちょっと存在感に欠ける。

とはいえ、前2作までの、ぺらぺらの起承転結の話よりは、一歩踏み込んだ、まるで香港アクションのような作品に仕上げていったのは楽しめたと思います。