くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「太陽の季節」

太陽の季節

主演は長門浩之、南田洋子であるが、石原裕次郎が端役で出たデビュー作として有名な作品である。
原作は芥川賞受賞作品ですが、映画としての評価はそれほどでもないように思います。

1956年という製作年度や時代背景を考えると、かなりショッキングなシーンが続きます。自由恋愛が当然のように夜の街で繰り返され、今で言うナンパ、婚前交渉、いわゆるセックスによる妊娠など、今ならかなり一般的になってしまった出来事が物語のエッセンスなので、当時はかなりの話題になったことでしょう。

ヨーロッパ映画の影響でしょうか?映像の背後にモダンな曲や、歌が流れ、ガラスの割れる音などを効果的に使った演出はなかなか実験的な試みが見られます。しかし、そんな画面作りも作品全体に効果を及ぼしているようにも思えないのは映画としてのリズムのバランスが取れていないのでしょうか?
やたら長門浩之の人物像が憎たらしく、南田洋子との揺れ動く心理があまりうまく表現されていない。

登場人物の背景が見えてこない。いったいどんな家庭なのか、おそらく、かなりの富裕層であることは確かで、そうした上流階級は学生でありながらふんだんにお金を使い、好き勝手な恋愛をし、おそらく当時の観客のほとんどがあこがれるような生活を実践していく。さすがに、今の私には入り込めないというか、感覚的に受け入れにくく、この映画は明らかに公開された時代が当時でないといけないという前提があるように思えます。

そんな意味からも、石原裕次郎の初出演作としての評価で現代まで来たのでしょうね。

90分あまりの作品であるにもかかわらず、長く感じたのはやはり脚本に今ひとつ推敲が足りなかったといわざるを得ないようです。