「しろばんば」
古き良き日本映画の名編、際立った何かがあるわけでは無いけれど、心が洗われるような映画でした。演出もしっかりしていますが、脚本が良いと、こういう映画になるのだなと思います。時間の流れ、心の移り変わりもしっかり映し出されている。監督は滝沢英輔、脚本に木下恵介が参加。
時は大正、山あいの村では夕方になると子供達が白く舞うふわふわしたものを追いかける。それがしろばんばというものだというナレーションから映画が始まる。
主人公洪作はおぬいという血の繋がりのない祖母と二人暮らしである。豊橋には実の両親がいるが、幼い頃からおぬいと暮らして慕っている。
主屋の家族は何かにつけおぬいを馬鹿にするが、それもまた古き日本の当たり前の風景であった。そんな洪作のところに大学を出たさき子という美しい叔母が帰ってくる。そしてこの村の教師になる。
美しいさき子を洪作はほのかな恋心で慕う。やがてさき子は地元の教師中川と恋仲になり、妊娠する。中川は転勤となり、さき子は実家である洪作の主屋の家で暮らすが間も無くして肺病になり、家を出て、しばらくして死んでしまう。
洪作はさき子が生前、勉強しなさいという言葉を頼りにひたすら勉強をする。
ラストは洪作達が天城のトンネルに向かって素っ裸で行進して行くシーンで映画が終わる。
素朴な人々の素直な心と生活、そし少しずつ成長していく洪作の姿が見事に描写され、粗探しもできないほどに美しくも懐かしい物語が詩編のように紡がれていく。素直に楽しんで、心の中を清らかに洗い流せば良いと思います。良い映画でした。
「零戦黒雲一家」
普通の並の娯楽映画、荒削りな脚本と演出で石原裕次郎、二谷英明のスターのみで興行を狙う映画でした。監督は舛田利雄。
時は第二次大戦末期、南方の孤島に取り残されたならず者兵士たちがいる島にひとりの隊長が零戦でやってくるところから映画が始まる。
あとはありきたりの男のドラマにとってつけたような女の登場、そして最後は救出に来た潜水艦に部下を送り出して、裕次郎と英明は敵機の中へ飛び込んでいってエンディング。
これというものもなにも無い娯楽作品でした。これもまた映画産業末期の一本ですね。