「青い山脈」(西河克己監督版)
さすがに物語の古さは否めない。ただ吉永小百合の映画という感じで、いわゆる青春スター映画としての位置付けでしかない一本ですが、こういう今や古き考え方の塊というのは、自分の心を純粋な時代に引き戻すような感じがしてちょっと心が洗われた感じがしてしまいました。監督は西河克己です。
吉永小百合扮するヒロインがバイクで学校へ登校するシーンから映画が始まります。担任の先生役が芦川いづみで、この二人のヒロインを中心に映画が展開。
ラブレターをめぐって生徒達や古い考えの先生たち、さらにはPTAの役員が入り乱れる全く見ていられないほどのストーリーで、呆れてしまうのですが、こういう考え方の時代を経ていまがあるのだなと考えると、どこか初心に帰る気がします。
例によってのテーマ曲に自転車で走る名シーンは残しての映画化作品という映画でした。
「あいつと私」
これはものすごくよかった。いやものすごい傑作でした。とても石坂洋次郎原作と思えないほどに映画として洗練されてしまっている。オブラートに包まないストレートなセリフが機関銃のように繰り返され、全く淀みなく流れ、画面が暗く沈まない。それでいて内容がしっかりと知的であるところがこの作品、いやこの時代の世の中の若者の凄さであるのかもしれません。監督は中平康です。
ある大学の校門に続くまっすぐな道から映画が始まる。いやその前に軽快な歌とイラストでのタイトルからなのです。
金持ちのボンボンの学生達の姿を中心に物語が進むが、一方で世間は1960年安保闘争真っ最中で、デモに参加したりニュース映像も流れる。芦川いづみ扮する女子大生は裕福ながら平凡な家庭の娘、対する石原裕次郎扮する男子学生は母親が事業で成功したセレブの息子である。この母は、すべて計画的に子供を作り、育ててきたいわば冷たいような人物だが、それはさらっと流して、とっても暖かく見えるからすごい。
そんなこの男子学生と女子大生の恋の物語の一方で、世間の若者達の性への問題などがとってもストレートにセリフのいたるところに散りばめられている。
男子学生に乱暴された友人、安保闘争で傷つけられる友人、結婚して大学を辞め海外に行く友達などなど、当時としての非常にモダンなエピソードが詰め込まれ、さらにセリフの応酬がテンポ良く映画を引き立てていく。このリズム感も素晴らしい。
芦川いづみが抜群にかわいいし、素晴らしい。石原裕次郎もとっても魅力的で素晴らしい。これが傑作といえる一本に出会いました。すごく良かったです。
「四つの恋の物語」
吉村公三郎の「家庭の事情」のリメイクですが、全然話が違うし、吉永小百合のスター映画という感じの一本で、これはこれで楽しい映画でした。監督は西河克己です。
冒頭、退職した一家の家長が四人の娘に退職金を分配する。娘達それぞれは、それぞれ生活し、うち3人は恋に出会う。しかし、分配したお金の話はほとんど出てこないし、なんだかあらぬ方向へどんどん進んでいくのです。
結局、吉永小百合と浜田光夫の物語がどんどんストーリーの中心を占めて行って、ラストはこの二人のハッピーエンドで締めくくられて終わる。
全体にひたすら明るくて楽しい映画に仕上がっている。それだけでも見た甲斐のある一本でした。