くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ハドソン川の奇跡」「あじさいの歌」

kurawan2016-09-26

ハドソン川の奇跡
離陸直後に鳥の衝突によって両翼のエンジンが停止、空港へ引き返すのが無理と判断した機長のサリーはハドソン川への着水を試み、見事着水、155人全員の命を救った実話を基にした作品ですが、さすがにストーリーの組み立てといい、サスペンスフルな娯楽性といい、人間ドラマといい、見事な映画でした。監督はクリント・イーストウッドです。

ハドソン川に着水し、無事帰還した機長のサリーの姿から映画が始まる。世間では英雄視されているが、航空機会社や保険会社は、その行為を、無謀なものとして調査を始める。一方で、サリー自身にも、一抹の不安があり、時折、都会の真ん中に墜落する幻想を見たりしていた。

物語は現在のサリーの姿を描く一方でフラッシュバックで、飛行機が着水せざるを得なくなった流れを挿入し、一方で、有識者やコンピュターによるシミュレーションの結果などが語られていく。そして、シミュレーション結果は空港への引き返しは可能という結論に達するのだが、サリーは公聴会の前に、人間によるシミュレーションを依頼する。

そして公聴会。人間のシミュレーション物語は空港への期間が可能と出たのだが、サリーは、事故発生直後の混乱と管制官の指示、さらに、機長らのマニュアルによる対応の時間を考慮して再度やってもらう。結果は墜落。空港への帰還は不可能と出る。さらに、片方のエンジンは再稼働可能というコンピューターデータに対し機長が答えた不能という結論も、エンジンが引き上げられ、再稼働不能、コンピューターの記録ミスと判断、サリーたちは晴れて、その栄誉を称えられて映画が幕を閉じる。

人間ドラマの迫真性はもちろん、回想と現実を巧みに組み合わせ、さらに着水後、混乱して機体から離れて危険になった乗客を警備隊やヘリが救助するシーンなど細かく描写して、平凡な英雄劇にしなかった細やかさもうまい。確かにアメリカ万歳的な取り方もできるのですが、観客の気持ちをつかんだ脚本のうまさだと思います。

素直に見て、いい映画だったと言える作品でした。


あじさいの歌」
芦川いづみ特集の一本で、石坂洋次郎原作らしい上流階級の青春ものという感じの映画でした。共演というか主演は石原裕次郎、監督は滝沢英輔です。

神社の境内で足をくじいてしまった会社経営者の倉田が、通りかかった建築設計をしている河田におぶされて、家に帰るところから物語が始まる。

倉田の家には箱入り娘のけい子がいて、河田と親しくなる。一方、けい子の母は男と家を出て、大阪で赤線の女主人になっている。けい子の友達、その兄、さらにけい子の母や一緒に出た男などが巡り巡って再開し、次第にギクシャクしたものがほぐれて行ってエンディング。

かなり甘ったるいお話ですが、石原裕次郎芦川いづみの魅力、さらに周囲の脇役の存在感で見せるあたり、さすがに映画黄金期の息吹を感じさせます。

たわいのない一本ですが、映画を見たという気持ちに大満足できる作品でした。