くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ヴィクトリア女王世紀の愛」

ヴィクトリア女王世紀の愛

この映画こそ原題の「THE YOUNG VICTORIA」の方がぴったりだったように思います。
非常にすっきりした画面づくりと、背後の音楽のテンポに合わせた編集による軽快なショットが所々に挿入され、一本のストーリー展開の中に小刻みにモダンな味わいを持たせてくれます。たとえば、晩餐に並べられたグラスのショットをアップからすっと遠方へピントを移らせたり、細かい人物のショットで弾みをつけたり、その背後に同じテンポで流れる曲がはめ込まれたりという具合です。

近年、ケイト・ブランシェットなどが主演した神々しいまでのイギリス王室のドラマを見慣れていたせいか、今回の映画が非常に斬新で、王室のどろどろしたドラマであるにもかかわらず、女王ヴィクトリアとその夫アルバートのピュアな信頼関係と愛が描かれ、ストレートに楽しむことができました。

もちろん、歴史ドラマですから、崩せない人物関連などは仕方なく複雑になりますが、それも先ほど書いたように重くなりかけると次の展開の区切りのように軽やかなショットを挟み込んでくれるので、素直に物語にとけ込んでいけるのです。しかも、ケイト・ブランシェットのような見るからに演技派と迫ってくるような迫力は主演のヴィクトリアを演じたエミリー・ブラントにはみられないので、どこか王室のドラマであることさえ忘れさせてくれる気軽さもありますね。

イギリス歴史上最強の国家を築き、しかも最長の在位を務めた偉大な女王の物語ですから、終盤は当然、落としどころはこうだろうと思っていると、さらりと夫アルバートとヴィクトリアとの仲むつまじいシーンを細切れに挟んでその後をナレーションして終わらせるあたり、にくいほどにスマートな作品に仕上がっています。

編集の見事さ、脚本のうまさなど技術的な完成度もそれなりに思えますが、やはり監督のジャン=マルク・ヴァレの規制の歴史ドラマにとらわれない新しい感性で作り上げられた壮大な歴史のワンシーンというイメージの作品で、重くも軽くもない、素直な映画でした。