くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「しあわせの隠れ場所」

しあわせの隠れ場所

素直にいい映画だと思える作品でした。誠実な演出と映像で見せる実話を基にした秀作という感想がぴったりの映画でした。

いまは80店舗以上のファーストフード店を経営するいわば成功者であるテューイ家の妻リー・アン(サンドラ・ブロック)が一人の不遇な黒人青年マイケル・オナーを養子にし、やがて彼は今をときめくフットボールの名選手となるまでを描く実話である。

物語をそのまま受け止めれば、ある意味すでに成功したアメリカ人が不幸のどん底の黒人を助ける偽善的な映画と捉えられるかもしれないが、それを言ったらこの作品は元も子もないと思います。もっとまっすぐにこの映画が伝えてくることを受け止めるのが一番大切なのではないでしょうか。

なんといっても秀逸なのがサンドラ・ブロックである。もともと好きな女優さんなのですが、この作品では上記のような偽善ととられかねない行動とマイケルに対する誠実な気持ちとの微妙な役どころを見事に演じているのである。目が心を訴えてくるというすばらしい演技力に引き込まれてしまいました。

彼女の演技がなければこの映画はなんとも退屈な作品に、いや凡々たる作品に仕上がってしまったのではないでしょうか。そこを彼女はものの見事に中級作品の秀作に引き上げました。

その上、脚本が丁寧です。もちろん原作もあるし、実話ですからそれぞれのエピソードがすべて脚本家の力量とはいえないかもしれませんが、絶妙の間合いで素敵なシーンが挿入されています。

成功者となり裕福な生活に浸るテューイ家にやってくる一人の大柄な黒人マイケル。食事の時間にテレビの周りに集まるのを一人テーブルに座って行儀良く食べるマイケルの姿に自分たちが驕りの中に浸っている現実を省みます。

また、成功者たちの妻の集まりの中で、ついつい下賎な話題に陥る友人たちの言葉に憤然と反論し立ち上がるリー・アンの姿もありきたりとはいえ、、グッドタイミングで挿入されるシーンです。

行き過ぎず、引きすぎず展開する一人のスポーツヒーローの半生の物語は、ラストに心地よい感動を呼び起こし、素直にこの作品から訴えてくる感動を受け止めてしまいます。
いい映画でした。