くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ゴールド 金塊の行方」「20センチュリー・ウーマン」

kurawan2017-06-08

「ゴールド 金塊の行方」
実話を基にした犯罪サスペンス映画なのですがあ、さすがに展開のリズムが良くないので、終始今ひとつ面白みを感じなかった。いくら実話とはいえ娯楽としての映画なのだから、見せてくれなければいけない。監督はスティーブン・ギャガン。

祖父の代からの会社を引き継いだ主人公ケニーだが、鉱山事業の失敗から瀕死の状態だった。ある時、かつて銅の鉱山を発見した地質学者マイケルを説き伏せて、新しい鉱脈発見のためにインドネシアに出かける。そして、マイケルはそこで金の鉱脈を発見、会社は一気に上場するまでに大きくなる。

ところが、会社の成功に目をつけた投資銀行が会社乗っ取りのために画策を企ててくる。しかし、すんでのところでその危機を乗り越え、さらに発展しようとした矢先、突然発掘されるはずの170億ドルの金塊が消えてしまう。というより、そういう金塊などどこにもなかったことで、マイケルの詐欺だったことが明るみに出るのだ

何もかも信じ、マイケルを片腕として進んできたケニーは呆然としたまま全てを失う。実は最初からマイケルの計画だったのであるが、そのマイケルもインドネシア現地の上層部に怒りを買い、殺されてしまったという連絡が入る。

時折、FBIの聴取に応じているケニーの姿を映し、最後に何もかもがマイケルの仕業だったと判明してケニーは自由の身になるのだが、全てを失って、その出だしの小さな家である妻のもとに帰ってきた彼のところに一通の手紙が届く。

かつて、マイケルを雇った時に、メモのような紙に書いたケニーとマイケルの契約書「見返してやろうぜ、儲けは山分けで」という文字とマイケルのサイン。そして同封されていたのが、会社が破産直前、マイケルが持ち株を処分して得た金の半額の小切手だった。

果たしてラストは事実なのかは不明ながら、このラストのしてやったり感がもう少し最初からうまく書き込まれていたらなかなかの映画になっていただろうに残念。脚本が悪かったといえばそれまでかもしれませんが、娯楽映画として仕上げるのか、実話の暴露映画で仕上げるのかを明確にしてつく売るべきだった気がします。


20センチュリー・ウーマン
これは良かった。音楽センスが抜群にいいし、こういう表現が映し出せるから映画は面白いと言える典型的な一本。いい映画を見たなぁと思えてしまう秀作でした。監督はマイク・ミルズ

1979年サンタバーバラ、思春期の少年ジェイミーと暮らす母ドロシアは夫と別れ息子と二人だけ。ルームシェアして一緒に生活するアビーとウィリアム、ジェイミーの幼馴染のジュリーが周辺にいる。

父親がいないジェイミーを気遣うドロシアはアビーとジュリーに彼の事を何かにつけて助けてやってほしいと頼む。アビーは写真家で、やや現代的な女性。ジュリーは近所に住み、特にSEXをするわけではないのに、夜ジェイミーの部屋に忍び込んで一緒に寝たりする。

物語はジェイミーの成長が気がかりなドロシアとジェイミーに、アビー達が接する物語が語られていくだけなのだが、時折、それぞれの人物の過去が説明されたり、リズミカルな音楽が映像を引き立てたり、色彩にこだわった画面作りも非常に洒落ている展開が繰り返される。

ドロシアの心配をよそに、少しずつ成長していくジェイミー。その姿に戸惑いながらも大人の母親を演じようとするドロシアの立ち居振る舞いがまた何気無く胸に迫ってきたりもする。

そして、最初はアビー達に任せていたドロシアが、ようやくジェイミーに直接向かうことができるようになり、二人でひと時ののバカンスを楽しんで、物語は彼らのその後を語ってエンディングになるのですが、なんともいえないラストシーンがとっても素敵なのです。

1999年、ドロシアは肺がんでなくなるけれどそれまでの人生の素晴らしさを息子が語り、妊娠は難しいと言われたアビーものちに二人の息子を授かったり、ジュリーもパリに飛び出して一人の生活を始めたりと、誰もがそれぞれの人生を歩んでいく。

後にドロシアの彼氏になる男性に毎年誕生日に送られる飛行遊泳で、嬉々として歓声をあげるドロシアの姿と飛行機を映して暗転エンディング。ああ良かったなぁ。これが映画の醍醐味だねと思わせる作品でした。