くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「海辺のポーリーヌ」

海辺のポーリーヌ

昨日に続いて30年ぶりにみたエリック・ロメール追悼作品。
物語の展開や人物の設定が、昨日の「満月の夜」に非常によく似ている。しかし今回は15歳の少女ポーリーヌを通じて大人の恋の模様を描いていくという設定が少し違うし、登場人物の心の変化、微妙な諍いなどが挿入され少し複雑さを加えています。

マティスの「ルーマニア風のブラウス」という絵画の色彩をヒントに画面構成したと解説にあるが、「満月の夜」同様、ブルーと赤、そして透き通るような反射を見せる白を基調にした色彩構成は同じである。ただ、今回は中間色のあじさいやグリーンの木々を背景に配置し、より深みのある画面になっている。ブルーもマリンブルーを中心に、ポーリーヌの服装にはセピアブルーを使うなど、かなりのこだわりがみられる。
このあたりの微妙な色彩の変化をネストール・アルメンドロスのカメラが見事に再現しているのがこの映画の魅力でしょう。

軽妙なせりふの応酬が繰り返され、美しい構図の構築による現代絵画のごとくの画面はなかなか見応え十分です。しかも海辺の別荘を舞台にしているので、透き通るような青空、水平線まで続く開かれた海を背景にした開放的な画面も奔放な従姉マリアンの恋愛模様を増幅させるような効果をもたらして、爽快感が味わえます。

「満月の夜」同様にちょっときまじめすぎてめんどくさい男性ピエール、プレイボーイでしかも妻子がある大人の男アンリの存在はほとんど同じ。しかしそんな大人同士のどこか思春期のポーリーヌからみると汚れたような恋愛模様は、シルヴァンとポーリーヌのベッドシーンで、遊びのように愛撫するだけの幼い二人の様子と対比されて、なんとも小憎たらしいラブストーリーになっています。

ワンパターンのようでもありますが、軽妙に繰り返されるウィットとユーモアに満ちたせりふ回しのおもしろさがこの監督の個性なのだとしたら、それはそれで彼のオリジナリティな作品として評価していいものだと思います。

何度も書きますが、とにかく色彩、構図が本当に卓越している監督だということが昨日、今日と見た二本で納得しました。人によって好き嫌いがある監督らしいですが、今のところ私は好きですね。