くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「SHORT PEACE」「楽園の瑕 終極版」「大英雄」

SHOT PEACE

「SHORT PEACE」
大友克洋森田修平、安藤裕章カトキハジメの四人が競作するアニメである。
オープニングは森本晃司監督。
一人の少女がかくれんぼの鬼になって神社の鳥居の前に座っている。目を開けると鳥居は近未来の建物になりその中に入ってストーリーが始まる。

第一話は「九十九」
一人の男が深い森の中で迷って、雨宿りに入った堂の中で、すでに不要になって捨てられた傘や着物の亡霊のような妖怪におそわれるが、いとも簡単に修復。そこへ堂の神が現れて、これも怨念を鎮圧して夜が明けると男に美しい傘と着物が与えられ意気揚々と去っていく話。

美しい日本の原色を多用した映像が実に美しく、大胆に描かれる男臭いアニメーション画像が静と動の対比でダイナミックに展開する様は絶品の一本。
監督は森田修

第二話は「火要鎮
幼なじみで隣同士 仲良しの二人の若者お若と松吉。松吉は大の火事好きがこうじて、とうとう火消しになって腕に入れ墨を入れたために勘当される。お若は松吉が好きにも関わらず、親の決めた許嫁に嫁ぐことになり、松吉に会いたいと思う一心から、部屋が燃えて火事になってもそのまま放っておいて、松吉がやってくるのを待つ。

やがて広がった火の手の中、松吉の目の前で、大きな塔に上って焼け死んでいくお若の悲恋。

絵巻物の縁を上下に配置した映像で、まるで絵巻物の一遍のように流れていくストーリーが実に美しい。シンプルな色彩演出と、クライマックスの火事の画面の大胆な映像が見事にコラボレートした作品。
監督は大友克洋

第三話は「GAMBO」
森深い村に巨大な赤鬼が娘をいけ贄にして村人を苦しめている。ここに、森の中の真っ白な巨大熊と戦う侍が一人。

ある日、村にたどり着いた侍は、鬼に差し出す最後の娘を決めて嘆く村人と出会う。その少女が森の中で寝ているとシロクマに遭遇。シロクマはGANBOと名乗る。人の言葉がわかるシロクマは少女の悲しみを理解し、赤鬼を倒すために鬼の住処へ向かう。

そして、自らの命を捨てて鬼を倒し少女を救う。

熊を追ってきた侍もこの熊が神の化身と納得するという日本昔話伝説のようなストーリー。
自然にあがなうことの恐れを描く人々のシンプルな感情が見事に伝わってくる一本で、神というものが次第に人々の心から消えようとしていく時の流れを感じさせる作品。私はこれが一番好きです。
監督は安藤裕章

武器よさらば
近未来、荒廃した地球で、残った武器を破壊しているチームのお話。

自力で走行する戦車を発見し、チーム一丸となって破壊、地下にあるミサイル弾頭を破壊すべく進入するが、破壊したはずの戦車が襲ってくる。

次々と犠牲者がでて、最後の最後、残った男は防護服を脱いで無防備になると、なんと戦車は一般人と判断して攻撃をやめ、その場を去っていくという、風刺の効いたラストシーン。

シンプルな色合いの中で激しい銃撃戦を描き、スリリングな展開で進むバトル戦はゲーム感覚である。そのおもしろさと、ラストの皮肉が何とも言えない作品だった。

監督はカトキハジメという人である。


「楽園の暇 終極版」
砂漠の黄色、空と水のブルーを基調にした映像とウォン・カーウァイならではのスローモーション。徹底した映像詩的な演出を貫く物語は、繰り返されるシーンの連続とせりふの連続に、次第に眠気をもようしてくる。

剣劇シーンも、華麗さというより詩的なイメージのスローモーションで見せる演出は、一種の様式美の世界ながらもオリジナリティあふれます。

物語は伝説の剣士たちの若き日をつづったオムニバス調の展開。レスリー・チャンが様々な剣士の物語を語り部のごとく語っていく。

色彩や映像にこだわった演出がなされ、斜にとらえる人物の配置、デジタル加工したような無味乾燥な黄色の色彩、色鮮やかすぎるブルー、そんな中でややほこりっぽいような色彩で映される剣士たちの姿と剣劇シーンの対照が不思議な色合いの作品に仕上がっていく。

どこか孤独な剣士たちの物語は哀愁をおび、一人また一人と時の流れの中に埋没していくストーリーに胸が締め付けられる。ただ、おきまりのスローモーションシーンはどうも私には向かないようで、最後まで引き込まれてみるにはしんどかった。並の映画ではないものの、好みではないですね。


「大英雄」
「楽園の暇」の撮影が行き詰まったときに、同じスタッフ、キャストで作り上げたパロディ映画ですが、なんともぐったりするほどにふざけまくった傑作コメディでした。

ウォン・カーウァイならではのスローモーションなどどこ吹く風で、監督はジェイ・ウォン、駒落とし、ハイスピードによる映像と、古き香港映画の典型のようなワイヤーアクションの連続、お話が有ってないような即興の展開にあれよあれよと引き込まれてしまう。

爆笑シーンが連発していくので、さすがに終盤になるとぐったり疲れてきて、飽きてきて、もうそろそろエンディングになってほしいと思ってしまう。

ギャグシーン、ぼけとつっこみシーン、なんでもありのおふざけシーンをトニー・レオンレスリー・チャンが演じるし、日本の「ウルトラQ」にでてきた、巨大猿ゴローやリトラの着ぐるみまででてきたら、もうあきれるしかない。

かつてゴールデンハーベスト社華やかなりし頃の香港映画はこんなだったと、懐かしくもとにかく笑いの連続。

結局、どんな物語だったのか不明のまま終わった。
でも、これは楽しい珍品映画でした。