くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「花のあと」

花のあと

藤沢周平原作の「山桜」に次ぐ二部作の一遍である。

物語の構成といい、プロットの展開といい、ストーリーの転換のうまさといい、いい映画でした。ラストシーンはじんとくる感動がこみ上げてきました。
前評判で北川景子の殺陣がおぼつかないとか着物の着こなしがよくないとかいわれていますが、それはあら探しというものです。たしかに、ぎこちなさはあるかもしれませんが、非常にまじめな演技でしっかりと演じてくれていると思います。

前半導入部の以登(北川)が孫四郎との出会いの桜のシーン、しれに続く剣術試合のシーンで一気にこの二人の物語を私たちに示してくれます。そしてその背後に頼りなげに存在する以登の許嫁の存在。
やがてこの物語の本筋に向かわんとする転換点が見事。

雪の中、江戸へ向かう孫四郎に駕籠が近づく、なにやら耳打ちされる孫四郎、背後に歩く以登の姿。ここがこの作品の転換点で、ここからそれまでの若い二人のプラトニックなラブストーリーから一転して美しいドラマが開花し始めます。
一見、うさんくさく荒削りな以登の許嫁才助(甲本雅裕)が次第に物語の中央に登場、一見うだつの上がらないように見えたこの男が、ひょうひょうとした中に切れ者である様子がかいま見えてくるあたり秀逸。一方で、真剣に以登を愛し、ほんのわずか孫四郎に嫉妬するワンカットも見事です。

プロットからプロットへの絶妙の長さのタイミングが、見事な脚本で、もちろん原作の良さもあるのでしょうが、最大に見所はその構成と甲本雅裕の見事な存在感でしょうね。

殺陣のシーンもぶつ切りにすることもなく、ロングで引いて丁寧に見せるし、やたらしつこいほど礼儀作法に乗っ取ったシーンが随所にみられ、本当に好感度抜群のいい映画でした。