くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「緑の光線」「抵抗 死刑囚の手記より」

緑の光線

緑の光線
30数年ぶりに見直す。
ヴァカンスの約束をドタキャンされた主人公デルフィーヌは失意の中、周りの友達の勧めで誘われるままに休暇に出かける。しかし、そこで出会うのはただ、一夜のセックスを求めるだけの男たちばかり、ドタキャンされた彼氏は山にこもり、彼女と会うつもりもない。ただ男を求めるだけの友人たちの軽妙な会話、友達同士のその場限りの会話の応酬が次々と展開され、その中で、さらに孤独になっていく主人公。

出される料理に「肉は嫌い」「生き物は嫌い」などと反抗的な態度に周りの友人も途方にくれる。そんなある場所で、太陽が沈む瞬間の緑色の光線の話を聞く。
道端で拾うカード、それにつられて気になる緑のもの、そんな中、絶望に近い状態でパリに戻らんとする彼女の前に一人の男性が。
なぜか惹かれあい、緑の光線を見るべく一緒に丘の上に、そしてそこに見たものは・・。

エリック・ロメールのファンが絶賛するこの「緑の光線」。期待に胸膨らませて見に行ったものの、正直、機関銃のように即興で繰り返される男あさり、女あさりの会話の連続、それに憎たらしいほどに自分の殻に閉じこもる主人公のいらつくような態度。何度もため息が出るとともに、しんどくてたまらなかった。画面はロメール監督の青、赤、黄色、の配色の構図が次々と繰り返されるが、この作品に限ってはそれを楽しめないほど、会話だらけである。

これが個性、これがヌーベルヴァーグの即興演出といわれればそれまでだが、個人的には先に見た3作品のほうがよかった。


「抵抗 死刑囚の手記より」
ロベール・ブレッソン監督作品である。30年ぶりに見直した。今回はデジタルリマスター版
実話に基づいた物語で、第二次大戦末期、ドイツの牢獄から脱出した一人の主人公の物語が、圧倒的な重厚かつサスペンスフルな演出で迫ってくる。

出だし、車の後部座席で護送される主人公、逃げるタイミングを計るように鋭い視線が画面に映し出されます。そして、車が電車にさえぎられ停車した瞬間ドアを開けて飛び出すも、すぐにつかまりそのまま監獄へ。物語はここから、いかにしてこの独房から脱出していくかを描いていきます。

狭い独房の中で虎視眈々と作戦を練りながら、必要な道具を身近なものを改良しながら作る過程とドアを抜けるために羽目板をはずしていく様がクローズアップを多用しながら描かれていきます。まさに緊迫のシーンが全編に繰り広げられます。やがて一通りの準備ができたところで、近々死刑が実行される旨の宣告が下され、物語は一気に転換。しかしそこで、一人の新入りと相部屋に。すべての緊迫感が最高潮に達したところで、いよいよ決行。息をもつかせない脱出劇がモノクロームの画面にせまってくる展開は圧巻です。

派手なアクションや、巧妙な会話のサスペンスはありませんが、唯一独房を出て汚物を捨てる場面と顔を洗う場面での一言二言の他の囚人との会話が緊迫感を高めていく展開は見事です。

物語は脱獄成功で幕を閉じますが、不思議な開放感よりまだまだ続くような不気味さがFINの後に残されるのはなんなんだろう。ロベール・ブレッソンの声が聞こえてくるような気がしました