くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「剣」「タイタンの戦い」

剣

「剣」
三島由紀夫原作三隅研次監督作品である。
スタイリッシュなタイトルバックから映画は始まる。右にKENの文字左に剣の筆文字。そして画面は目のクローズアップ、そして太陽。一気に緊張感が走りこのままエンディングまでひと時もこの緊張感が緩むことがない。圧倒的な張り詰めた空気が漂う映画、それがこの「剣」である。

物語は大学の剣道部を舞台に、剣に対する神がかり的な潔癖さと一途さでその技量を磨くこと、すなわち人間を磨くことと信じて疑わない国分という主人公を描いていく。

剣道の技量がめっぽう秀でていて、しかも人間的にも非の打ち所のない主人公国分(市川雷蔵)。その彼をひたすら慕う後輩の壬生、そして対照的に剣は強いが、どこか人間味あふれる友人の賀川(川津祐介)。彼らを中心に、ひたすら求める頂点とはなにかと問い詰めていく展開は三隅研次監督の画面作りの芸術性と相まって、一本の張り詰めた糸が今にも切れそうで切れない危うさを残しながらぐいぐいと私たちを牽引していきます。

時にヨーロッパ映画を思わせるような賀川と真理(藤由紀子)がドライブするシーン。尋常を超えたスピードで突っ走る車の中での二人の会話にもゆるぎない緊張が途切れません。そこに散らされた一抹のうそ、それをうそと知りながら信じたい賀川の姿とのやり取りが絶妙にそして微妙に物語をラストのクライマックスへ導いていきます。

合宿でひとつに完全にまとまり、目いっぱいに張った緊張の糸も、張り詰めたままに完成したかに見えたときに、監督の訪問、真理の差し入れ、そして、一本の糸に微妙な共鳴が走って、張り詰めたままに迎える悲劇的なラスト。

さらに続く大学の剣道場での衝撃的なエンディング。まさに三島由紀夫の世界でもありますが、三隅研次監督ならではの映画独特の圧倒的なリズムがこのラストシーンで大団円を迎えます。
思わず「あっ」と叫んでしまうこのラストは名シーンかもしれませんね。
すばらしい傑作でした。


タイタンの戦い
1981年版、つまりレイ・ハリーハウゼン最後の作品のリメイクである。
オリジナル版はストーリーよりもハリーハウゼンの特撮が見所であるために、あまり物語のおもしろさに重点が置かれなかった。今回は当然特撮技術はCGをふんだんに使い、さらにストーリー重視で制作されたので、それなりに楽しめる作品でした。特にクライマックスはなかなかの見応え十分で、アクションエンターテインメントとしてのわくわくする展開で引き込まれ、さらに化け物クラーケンが登場するCGシーンの迫力はなかなかどうして、すばらしかった。

ルイ・レテリエ監督作品は「ダニー・ザ・ドッグ」「インクレディブル・ハルク」共々好きな作品であるし、今回も格闘シーンはハンディカメラによる迫力あるシーンを心がけたり、なかなか意欲的な演出が楽しめました。
ただ、手持ちカメラの格闘シーンはさすがにややつけれたというのも確かです。2D版でみたので耐えられたという感じですね。

ギリシャの神々の姿やギリシャの宮殿の美術セットなどがどうも今ひとつちゃちに見えて、荘厳さにかけるデザインはどうもいただけません。このあたりは古き良き歴史大作の時代の美術の方が好きですね。これも時代の流れでしょうか・

特筆すべきは冒頭にも書いたクライマックスです。
メデユーサの首を手に入れ、仲間をすべて失い、日食の時間が迫り、アンドロメダを助けるべく剣を手にしたところへペガサスがやってくる。それにまたがり飛び出すペルセウス、一方でアンドロメダは生け贄の台上へ、そこへクラーケンが怒濤のごとく現れる。駆けつけるペルセウス。このあたりの縦横無尽のカメラワーク、というかCGアングルのスピーディーさはわくわくするものがあり、まさに懐かしいアドベンチャーエンターテインメント映画の醍醐味復活という感じでした。どこか懐かしい演出であった気がします。

そもそも、たわいのないB級のアドベンチャードラマなので、今回大作としてリメイクしたとはいえ、やはりB級作品にはかわりありません。でも、それと知った上で十分に楽しめる一本だったと思います。