「忠次旅日記」(デジタル復元、再染色版)
伊藤大輔監督の忠次三部曲の一部で、いわゆる不完全版として現存するフィルムを見ました。なるほど、噂通りの見事な作品、というか、圧倒される演出に、度肝を抜かれる。
サイレントであり、本来の18コマ上映機械がフィルムセンターにしかないので、やや、早送り的に進むのがしんどいが、巨大な桶を並べた中での剣戟シーンを含め、画面の構図の見事さとダイナミズムに活動写真の傑作を見たという感動に包まれてしまいます。
全編が見れないので、ストーリーの構成は語るすべはありませんし、今回は三部曲の終盤の部分なので、剣戟といより、クライマックスのドラマ性が中心になっています。
とはいえ、計算されたかのような配置と構図、カメラワークで見せる映像の極みは、作られた1927年という時代を考えると、圧倒されるものであり、今見ても、極上のクオリティに驚愕するものであり、これこそ映画の歴史の遺産であろうと思います。完全に残っていないのがなんとも悔しい一本でした。
「緑はるかに」(コニカラー復元)
浅丘ルリ子のデビュー作で、かなりのレア作品。とにかく、お話は適当な展開で、子供騙しと呼べるような映像と、ストーリーにさすがに、突っ込みどころ満載と、気恥ずかしくなる感じの映画です。
ただ、コニカカラーと呼ばれる撮影、現像形態が希少で、その歴史的遺産の色合いが強い映画で、作品の良し悪しより、その技術の保存という意味で、見ておくべき映画だったということでしょう。
日活の初カラー作品でもあり、まだまだあどけない少女の浅丘ルリ子の姿が見ることができる。ただそれだけで、えいがとしては、なんとも言えないさくひんでした。
「サイレント・アンソロジー」
断片的ではあるが、歴史的遺産として発見された映画作品をデジタルで修復し、現存する範囲で、その足跡を見ていく短編集的映像である。
作品は、乱闘シーンのモンタージュが話題の「斬人斬馬剣」、小津安二郎の「和製喧嘩友達」、伊藤大輔監督の「長恨」、伊丹万作監督の「国士無双」である。
いずれも10分から20分の作品なので、どれがどうという感想にならないが、「国士無双」は単純に面白かった。これは傑作だと思います。
どれも、全長版が見られれば、傑作に値するものだろうと思いますが、残念ですね。でも、その片鱗を見ることができただけでも、貴重なひとときだったと思います。