くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い」

ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモー

イタリアの巨匠カルロス・サウラ監督作品。
全編をセット撮影するという演出法で、カメラにヴィットリオ・ストラーロを迎えた意欲作である。

出だし、ヴェネッチアの流れに巨大な像が流れてくる。ドン・ジョヴァンニの舞台で使うセットの像。夜の町並みがブルーで仕切られ、宮廷の内部の鮮やかさと対比した映像が実に美しい。霧による霞さえも幻想的で、時にちらほらと瞬く炎の黄色が独特の雰囲気を醸し出していきます。まさにヴィットリオ・ストラーロの世界です。

教会、少年時代の主人公が改宗をするべく牧師の前にいます。それを拒否して走り込んだ部屋で突然窓からの光がさっと一冊の本を照らす。目を奪われるショットですね。その本がダンテの「神曲」、そこに描かれた女性ベアトリーチェに心を奪われます。そして、ウィーンに行った主人公ダ・ポンテはそこでかつて見た本の女性ベアトリーチェにそっくりなアンリエッタに出会い一目惚れしてしまう。

物語は天才劇作家ロレンツォ・ダ・ポンテがモーツアルトと出会い、名作オペラを次々と発表していく様と一方でアンリエッタとのラブストーリーを軸に展開するのですが、オペラが完成していくにつれて、室内からオペラの舞台へ、そしてまた屋外へとすべて光の演出による背景の変化と書き込まれた美術セットで描かれていく映像演出がなんとも幻想的でかつ斬新。
次々と舞台のように場面が転換していく中で演じられる本物のオペラの迫力は目を奪われます。

モーツアルトはさすがに「アマデウス」の時のイメージが強く、なかなか本編のモーツアルトになじめませんでしたが、これはこれでいいのかもしれませんね。

室内から舞台へ、オーバーラップのように展開していく映像の数々は見事なのですが、ちょっと、ストーリー展開がしんどくて、オペラシーンについても、あまり造詣がないせいか正直しんどかったです。体調が悪いせいか、作品が退屈なせいか判断できないほど眠くて、やっと終わったというのが感想でしたが、映像の美しさは特筆すべきものがあったと思います