くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「必死剣 鳥刺し」

必死剣 鳥刺し

藤沢周平原作シリーズの映画化。監督は平山秀幸。久しぶりに大好きな池脇千鶴がヒロインで登場するので勇んで見に行きました。
淡々としたストーリーは藤沢周平の物語ゆえに仕方ないにしても、演出もこれといって工夫のない凡々たる映像。とはいっても退屈さを感じさせないきまじめなスタイルの作品でした。

能の舞台から映画が始まります。桜の花が散って、いかにも藤沢時代劇というイメージ。そして、そこに居る登場人物の紹介が終わると、側室蓮子(関めぐみ)を豊川悦司扮する兼見が刺し殺すショットに物語が進んで、一気に本編へ引き込んでいきます。

兼見は本来切腹、斬首のところ、寛大な処置で一年の閉門(つまり自宅謹慎)、その真相を探るおもしろさもこの映画を最後まで見せる魅力になります。一方で兼見を世話する亡き妻の妹里尾(池脇千鶴)との密かな心の行き来も、地割りと作品にいる付けしていきます。

閉門扱いを受けた兼見とその世話をする里尾の姿を描く一方で、フラッシュバックのような回想シーンが描かれ、この藩の実情が明らかになっていきます。そして、兼見が寛大な処置を受けた理由こそ、殿に敵対する別家の剣の使い手、帯屋隼人正に立ち向かわせるためであったという真相から一気にクライマックスへ。

里尾を知人に預け、自らは命をかけて、帯屋と対戦せんとする。必死剣鳥刺しとはいかなる剣か?その真相が明らかになるクライマックスのチャンバラシーンが見所になります。
しかし、帯屋との対決シーンはその秘剣は登場せず、その後、ただ、自分の野心のために兼見を利用したことを告げ、帯屋を倒した後の兼見に斬りかからせる津田民部(岸部一徳)にたいし、最後の最後で、一気に刺し殺す場面で真相を明かします。

そして命果てた兼見、その姿を子供を抱いて待つ里尾のショットで映画が終わります

チャンバラシーンはやたら血が飛び散り、吹き上がるシーンが次々登場し、ちょっと安易な演出ではないかとも思えるし、風景を撮ったシーンもこれといって風情はありません。もちろん、粛々と描かれるサラリーマン的な時代劇のムードはしっかりと伺えますが、それ以上でも以下ではないのはいかにも残念。