ディズニーの名作「ファンタジア」の中の一編をふくらませてファンタジーアドベンチャーに仕上げた作品。まさに娯楽のジェリー・ブラッカイマー制作ならではの作品なのですが、正直、がっかり。
監督はファンタジックな作品が得意で、子供のようなメランコリックな映像を作り出すので私も好きなジョン・タートルトーブ。と思いきや今回は残念。
まず、ストーリーが非常に薄っぺらい、それにそれぞれのエピソードやプロットの一つ一つが原因があって結果が伴うというような丁寧な形が完成していない。そのために、とってつけたような展開が随所に見られる。特にクライマックスの人形を主人公ディヴが難なくホルヴァートのところから取り上げると、次の間でガールフレンドのベッキーがホルヴァートに捕まっている、って何このショット?という適当さである。
そんな所々の弱さももちろんだが、全体に一本筋の通ったストーリーになり切れておらず、魔法使いの弟子としての物語とデイヴとベッキーの物語がそれぞれの展開にブレーキをかけるようにうち消すように物語が進む。バルサザールとディヴの訓練シーンが非常に細切れな上に、これからかというところでベッキーが現れてまるでCMが入ったようなつまずきを見せる。この繰り返しでいらついてきたところ一気にクライマックスの対決シーン。確かにCGは派手だが、いっこうに盛り上がりの見られない演出が何とも歯がゆい。
ただ、出だしは楽しい。
はるか昔、三人の魔法使いが一人のうっらぎりと凶悪な魔女の登場で壮絶な戦いの末その結末を魔法使いの弟子にゆだねるファーストシーンのわくわく感は最高。さらに、幼いディヴがあこがれのベッキーに手紙のメモを渡す。その手紙の返事を返すが、風で飛んでしまって、それを追いかけていくデイヴはとある骨董店へ。どっかで見たようなシーンで始まる冒頭部はファンタジックで素晴らしい。そしてそれから10年後、ここからがなんとも稚拙なのです。
しかしこの映画、様々な映画のシーンが盛り込まれているのがなかなか楽しい。
トイレでホルヴァートがデイヴを見つけるシーン、「ハロー、デイヴ」というのは明らかに「2001年宇宙の旅」の万能コンピューターHALが主人公を呼びかける声と一緒である。さらにデイヴがホルヴァートのところで人形を取る下り、明らかに「レイダース失われたアーク」でインディ・ジョーンズがファーストシーンで黄金の人形を同じ重さの袋と入れ替えて取るシーンと全く同じ。もちろん、「ファンタジア」の箒の魔法のシーンは完全にオマージュですが、そんなこんなの楽しみは満載である。
とはいっても、全体の適当な脚本のつまらなさは結局ラストで科学と魔法をごっちゃまぜにする、まさに一昔前のディズニー実写映画そのまんまの展開。全く進歩していないディズニースタッフの頭は未だに実写映画も子供だましで良いと思っているのか?
アニメを作らせると世界一のディズニーも未だに実写ではこのような失敗をする。
壮絶なクライマックス、モルガナの蘇りと試写が生き返ろうとする最終魔法のシーンはがんばっているが作品全体として非常にわずかすぎて、全然盛り上がってこない。結局、死んだと思われたバルサザールも奇跡の蘇り。そして、エンドタイトルの後にとってつけたようなホルヴァートが生きているという続編に続かせようとするショットで終わる。
それほど期待はしてなかったが、ここまでとなると、あまりにも寂しいですね。