くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ヒックとドラゴン」「サブウェイ」

ヒックとドラゴン

ヒックとドラゴン
元来3Dアニメは敬遠するのですが、余りに評判がいいので見に行きました。
そして、感動、期待を十分に満足させる傑作でした。やはりアニメはディズニーからでしょうか?監督のクリス・サンダースとディーン・ヂュボアはディズニーアニメ出身者です。

飛行シーンが抜群にすばらしい。まるで全盛期の宮崎アニメをしのぐ縦横無尽のカメラアングルと、あれよあれよと引き込まれる浮遊感はまさにアニメーションならではの醍醐味です。それに手に汗握るスピード感と天地が消えてしまうような立体感のある空間演出は実写やCG作品では作り得ないオリジナリティを生み出しています。

さらに、このトゥースというナイトフューリーという種類の真っ黒なドラゴンの表情が何とも愛らしい。真っ黒で恐ろしげな姿なのに愛嬌のあるでっかい目と大きく開いた口、そこにある歯並びさえもこのキャラクターに親しみを与えています。一言も言葉を発っせず、うなり声とくにゃくにゃと器用にゆがむ表情がさらに愛くるしさを倍増させ、主人公のヒックと並んでこの映画のおもしろさを引き立てています。

さらにもう一点、この作品がすばらしいのはそのストーリー展開の歯切れの良さでしょう。一歩間違うとディズニー的なおとぎ話になったり、ただの中途半端なアドベンチャーで終わったり、少年の成長を描いていますといわんばかりの教訓めいた物語になるところをそれぞれの可能性を程良く手短にすませて、あくまで一本の筋の通ったメインストーリーにぐいぐい引き込んでいくように映像が盛り込まれています。

出だしでヒックの立場を説明、ヒックがドラゴンを倒す勇者になることにあこがれているという勇気ある少年であるところをほんの短い時間のシーンで見せてしまいます。そして一気にトゥースと出会う場面へ。そしてそこからも一筋縄で仲良しになるのではなく、巧みにドラゴン訓練のショットを挿入して次第に親しくなる様子を暗に訴えてきます。

そして、クライマックスへ続くドラゴンたちの住処を発見する下りから、一気に父親たちにトゥースの存在が知られ、大ドラゴンをたおさんと出帆するシーンへ。

ここでもとらえられたトゥースのショットは非常に短く、変にこだわってシーンを長引かせずにひたすら大ドラゴン退治へ突き進む様子を描くのですが、ここのシーンもくどいほどに長くない。そしてピンチになった父親のところへ駆けつけるヒックたち。まさに「駅馬車」の騎兵隊到着の名シーンのごとくグッドタイミングの時間配分である。

そしてラスト、縦横無尽に飛び回るトゥースの飛行場面の見事さ、大ドラゴンとの空中戦の迫力、そして火の中に落ちたヒックを追ってトゥースが飛び込み無事助かってめでたしめでたしのエンディングまでそれぞれのプロットの構成が練りに寝られて配分されているのが秀逸でした。

音楽も美しく、エンドタイトルの時も物語の感動がじわりと呼び起こされます。
非常に基本的なストーリー展開ですが、子供向きだといわんばかりに教訓めいた説明は完全に排除し、映像のおもしろさで徹底的に引き込んでくる演出がみごとでした。


「サブウェイ」
ポップでモダンなリュックベッソン監督の映像感覚がさえわたる初期の傑作である。

言葉通り映画が始まると金髪のぼさぼさ頭のフレッド(クリストファー・ランバート)の姿が画面に映り、彼の運転する車の後ろにベンツが迫ってくる。フレッドがカーステレオにテープを入れるとハイテンポな曲がながれタイトルが流れる。走る二台の車、真っ赤なトレーナーで体操する男、飛び越える車やがてフレッドは車を降りて地下鉄の入り口へ。サフウェイのタイトルがでる。

まったくおしゃれである。そしてフレッドは地下鉄構内へ、向こうからドラムのばちをもった男(ジャン・レノ)がやってくる。ローラースケートで駆け抜ける若者が登場、ブルーやレッドイエローなどの色彩を駆使した画面が展開する。
いったいこの映画はなんなのか?最初はその展開についていくのが大変である。ただ、地下鉄に逃げたフレッドがもっている書類と引き替えにエレナ(イザベル・アジャーニ)を呼び出し、お金を要求するあたり何かこの書類に意味があると思わせられる。しかしその後、追っ手を逃れて地下鉄の線路から地下鉄構内の迷路のように入り組んだ通路を駆け抜けていくところから新たな物語につながる予感がする。案の定、ローラースケートの若者出会い、地下構内でたむろするバンドメンバーや地下鉄がしまった後パーティをしたりする不思議ワールドが繰り返されるともう一つのこの映画の魅力がかいま見え始めます。

物語は複雑な地下鉄構内を舞台にフレッドが盗んだ書類を追う男たち、地下鉄内の警察官たち、フレッドに心引かれたエレナの物語が展開していきます。サイケな色彩とシュールな画面展開を交え最初はフレッドの逃亡劇と地下鉄構内の犯罪取締戦の面白さを描いていたのにフレッドとエレナのラブストーリーが次第に浮き上がってくる面白さは抜群です。

やがて、フレッドは地下構内の男たちのバンドの演奏会を企画、一方でエレナはなんどか地下構内と自宅を行き来を繰り返しながら、やがて夫の元を離れ、フレッドの元へやってくる。警官はようやくのところでローラースケート男を捕まえる。
そこへフレッドに迫ってくる追っ手は彼に銃口を向ける。エレナがフレッドと知り合い、恋に落ち、フレッドがなぜ書類を盗み追われているかが明らかになって物語すべてが一つに集約されていく。そしてフレッドは銃に打たれ倒れ、エレナが駆け寄って、フレッドは気を失う。そして泣き叫ぶエレナを警官たちが押さえ、カメラはもう一度フレッドへ。ゆっくりと目を開けてバンドに会わせて唇を動かして映画が終わります。

まさにリュック・ベッソンの豊かな感性が爆発した作品でした