くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「別れの曲」「小さな命が呼ぶとき」

別れの曲

「別れの曲」
ショパンエチュード第3番は一般的に「別れの曲」という愛称がなされているが、それはこの映画でメイン曲として使われたからである。それほど音楽映画の名作としてヒットした作品ですが、今回ショパン生誕200年ということでオリジナル版のドイツ語で再公開されました。

ショパンがいわゆる「別れの曲」を恋人のために作曲したところから物語が始まります。
ポーランドワルシャワの町、今にも暴動が起こりソビエトからのポーランド独立紛争が巻き起こるすんでのワルシャワです。そんな運動に参加していたショパンですが、恩師であるエルスナー教授の機転でパリで演奏会を開催することになります。

やがてパリにでたショパンは一人の女流作家ジョルジュ・サンドに見初められ、その人脈もあって大成功、ショパンとしての名声が一気に高まっていくところで映画は終わります。
ほんのわずかな人生のひとときを扱った作品ですが、綿密に組み立てられたプロットと絶妙に演出されたシーンとシーンのリズムが見事で全体に充実した物語構成を堪能することができました。

パリに旅立とうとするショパン、恋人のコンスタンティアそして彼女に言い寄ってくる富豪の実業家、ショパンを引き立てようと躍起になるエルスナー教授の姿、そしてパリでふとした偶然からショパンの人生を帰ることになる女流作家ジョルジュ・サンド、そしてピアニストであるフランツ・リストの存在。それぞれに隙のない演出が施されているので間延びしにおもしろさも味わえるのです。

やがて、ワルシャワから成功したショパンのところへコンスタンティアがやってくる。ちょうどその夜、パリの人たちに認められたショパンジョルジュ・サンドと旅にでる約束をして朝帰りする。最後に「別れの曲」を弾いてとせがむコンスタンティア、そして「ワルシャワに帰ります」と教授に涙で訴える言葉にエルスナー教授も「私も一緒に帰ろう。もうショパンに私は必要ない」と答えて映画は終わります。

紋切り型の終わり方ですが、このエルスナー教授の言葉に胸が熱くなってしまいました。
なかなかの秀作であったと思います。


小さな命が呼ぶとき
非常に作り方がまじめで丁寧、常に登場人物に対して向けられるカメラ視線がストレートでこだわりがなくて見ていて気持ちの良い映像作品でした。

もちろん、実話に基づく物語なので、そう映像表現に仰々しいものやテクニカルなことは好ましくないのかも知れませんが、それにしても素朴と言う言葉がぴったりの演出は見事というほかありません。それに物語の展開も主人公の夫婦やその子供たちを哀れむような視線で展開させるわけでもなく、彼らを助けることになるストーンヒル博士も英雄のごとく描くわけでもない。ましてや少々偏屈な人物ではあるけれどもそれもいきすぎない。
資金を提供することになる製薬の投資会社も時に企業利潤追求のために冷酷なシーンも登場しますがこちらもいきすぎることなくさりげなく交わしている展開も好感。

特筆するのが、主人公ジョンに扮したブレンダン・フレイザーがまさにはまり役で、でぶっとしたおなかが一家をまとめる頼りがいのある父親役を見事にその風貌で演じている。また、子供役の特に娘メーガン役の女の子の底抜けに明るい演技もともすると陰気になるストーリーに太陽の光のように輝きを与えて物語の展開を牽引していく。

主人公たちを応援する同じ病気を抱える家族たちの集まりもいきすぎない登場シーンで決して主人公たちのたどっていく努力の姿をじゃましないように展開を飾っている。
総じて、何もかもがさりげなく、そしてそのさりげなさが、現実の物語であるというリアリティを生み出している。この淡々とした映像表現はある意味で卓越していると呼ぶものかも知れません。2時間あまりの上映時間中、製薬会社を起こしたふたりが次々と資金や企業の利潤追求の渦中の中で困難を克服していく様はある意味まったく飽きさせない娯楽性ニモつながるおもしろさがある。秀作と呼べるのではないでしょうか。良い映画でした。