くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「おもかげ」「ホテルニュームーン」「アイヌモシリ」

「おもかげ」

何とも不純な映画、主人公に全然感情移入していかない上に、鬱陶しくさえなってしまった。ただ、ゆっくりと対象に迫っていく長回しのカメラワークがなかなかの作品で、カメラが物語を語るという演出は見応えありました。さらに音の演出も特に前半冴え渡っていたのは見事でしたが、後半に行くに従い、ひどくなっていくのは何とも言えなかった。監督はロドリゴ・ソロゴイェン。

 

主人公エレナとその母が帰ってくる。そこに元夫と旅行中の6歳の息子から電話が入る。父親が戻ってこない上に、自分がどこにいるかわからないという。パニックになるエレナはそのまま飛び出していく。そして10年後、息子が最後の電話をかけたらしいフランスの海辺のレストランでエレナは働いていた。と、まず強引なオープニング。

 

ある日、息子の面影を持つジャンと出会う。エレナが執拗にジャンに近づくので次第にジャンはエレナを慕うようになる。エレナはジャンに息子を思い描いているだけなのですが、ジャンは恋心に変わり、それに伴い、二人の周囲を巻き込んで戸惑いが広がっていく。エレナの恋人もそんな彼女を危惧して、早々に引っ越すことにし、その日がやってくるが、ジャンは両親とパリへ戻る日が来る。

 

ジャンは、両親の元を逃げ出し、エレナと最後に会おうとする。エレナは恋人から車を借りてジャンのところへ行き二人は口づけをかわす。そして、エレナが戻ってくるとラモンから電話が入る。こうして映画は終わるのですが、結局十年間も精神的に不安定なままの一人の女が、息子に似た少年に会い、何故か恋愛感情を抱いてしまう何とも一貫性のない作品で、中盤、ジャンに結婚を申し込まれ浮かれるエレナの醜いことはこの上ない。カメラワークや音の演出は見事ですが、何とも言えない鬱陶しい映画だった。

 

「ホテルニュームーン」

久しぶりに陳腐な凡作を見た。登場人物がまず生きていない。しかもカメラも平凡、脚本も陳腐、見ていられなかったがイランと日本の合作という珍しさだけで見た。監督は筒井武文

 

娘モナと母ヌシンがヌシンが腫瘍で手術しないといけないという診断を受ける場面から映画が始まる。ヌシンの行動を不審に思ったモナがヌシンを尾行すると、ヌシンが一人の日本人田中と会っている現場を目撃する。モナはてっきりこの日本人が本当の父親だと思い、調べ始める。

 

一方で、モナはカナダへ留学する計画を立てていた。恋人のサハンドとの関係も厳しい母ヌシンの関わりもあってややこしくなる中、ひたすら田中を調べるモナ。とにかく展開が凡庸で、今時テレビドラマでもやらない流れが続く。

 

サハンドはモナを疑い始め、例によって田中のある秘密は実は平凡そのもの。ヌシンは若い頃、恋人との間で妊娠するが恋人は去ってしまう。その合い挽きの場所がホテルニュームーンらしい。この展開もラストでやっとでてくるという適当さ。

 

そして一人日本へやってきたヌシンは田中に拾われ、そこで出産。子供のいなかった田中夫婦はヌシンの子供を引き取ろうとするが、手放しきれないヌシンは赤ん坊を連れてイランに帰る。そしてモナを育て、昔借りたお金を返そうと、イランに仕事でやってきた田中と会ったという経緯。ラストは、冒頭の腫瘍の手術にヌシンが向かうところで映画は終わる。何とも言えない平凡そのものの展開と、適当な脚本にうんざりし通しで、無理やりのラストも呆れてしまった。

 

アイヌモシリ」(リは正規では小文字です。)

典型的なローカルシネマという感じの一本、まあ北海道フェチみたいなものなのでこれはこれで楽しむことができました。監督は福永壮志。

 

阿寒湖畔アイヌコタンの村に住む中学生のカントは、この村を出ていくことを将来の夢にしていた。そんな時、土地のアイヌ人のデボから、森の奥に隠して飼育している子熊の世話を一緒にしようと提案される。

 

こうして、カントはその子熊をペットのように餌を与えて可愛がるが、デボはこの熊をイヨマンテの儀式にする予定だった。イヨマンテとは、アイヌ民族全員で世話をした子熊を旅立たせる、つまり殺して自然に返してやるとい伝統的な行事でここしばらく行われていなかった。

 

村人たちの複雑な心境の中、イヨマンテの儀式が行われることになりカントは儀式にも出席しないものの、そこにある何かを感じ取って一つ大人に成長する。

 

細かいエピソードの数々が雑に処理されているので、カントの成長の物語や儀式が持つ深いメッセージなどは全然伝わってこない作品ですが、阿寒湖畔の姿やイヨマンテの儀式などが見れたのは良かったかなという作品でした。