くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「しあわせの雨傘」「クレアモントホテル」

しあわせの雨傘

しあわせの雨傘
楽しい人生賛歌です。そしてカトリーヌ・ドヌーヴの映画でした。

出だしからせりふが踊りだして歌い始めるリズム感はまさにフランソワ・オゾンの世界です。
ドヌーヴ扮するスザンヌがジョギングをしている。美しい森の景色、色彩に彩られた小道がなんともいやされるほどに美しい。そんな中、一休みすると動物たちにカメラが移る。その様子をスザンヌがとらえ、語りかけ詩の題材にするべくメモを取る。

日常の周りの景色がさりげない美として描かれる導入部が何とも素敵です。

そして物語はワンマン経営で従業員に嫌われている夫である社長ロベールの登場。従業員の不満が爆発してストライキになったところへロベールが倒れ、代わりにスザンヌが社長に。

一気に華やかな展開になって画面は色彩があふれ始め、人々に笑顔が満ちあふれる。工場内もカラフルになり物語は揚々としたスザンヌの人生の転機の物語へと進んでいきます。

しかし、ここで終わらないのがこの映画のおもしろさでしょうか?
退院してきたロベールは再び社長に返り咲く画策をし、スザンヌを追い出してしまう。

再びジョギングシーンが繰り返されますが、すでに前向きな人生を決めたスザンヌは今度は議員への出馬を決意する。

ただ、そこへ至る中で、若い頃にたくさんの男性と関係を持った等のエピソードが語られ、それがきっかけでババン(ジェラール・ドパルデュー)に愛想をつかされる下りや、ヒッチハイクで乗せてもらったトラックの運転手にそれとなく色目を使う仕草がどうも気になると言えば気になりますが、まぁ、それはフランソワ・オゾン流の演出ととらえれば気にもならない場面かもしれませんね。

結局、圧倒的な得票で当選し、演説の場で華麗にマイクを持って歌う場面で映画は終わります。

人生はすばらしい。人生は楽しいものよと謳歌するドヌーヴのアップが何ともほほえましい映画でした。
ドヌーヴの映画と言えばそうかもしれませんが、美しい景色を背景につづられる人生謳歌が印象に残ることは確かだと思います。


クレアモントホテル
エリザベス・テイラーの原作による物語。といっても女優のエリザベス・チラーではなくイギリスの女流作家である。
クレアモントホテルという長期滞在型ホテルへ一人で泊まりにやってくる主人公サラ。

すでに痴呆がかかっているかのような演出も見られるほどの老婦人ですが、なんとも品がよくて素敵である。
しかし、ホテルに泊まっている人々はなぜか老人ばかり。ドアマンもおじいさんで、しかもまるでホラー映画にでてきそうなどこか胡散臭いムードを漂わせている。

この設定から、どうもこの映画はファンタジーなのではないか?この主人公の空想の世界なのではないかとさえ思えてくる。

たまたま出かけたときに足をつまづいてけがをし一人の若者ルードヴィックと出会う。そして、何度読んでもやってこない現実の孫デズモンドのかわりにルードヴィックを孫としてホテルに招待する下りが前半部分。

といって、デズモンドもちらりと登場するが別に祖母と諍いがあるわけでもないふつうの人物である。娘も祖母を疎んじているわけでもない。そんな人物背景があるとさらにこの映画がサラの幻想の世界なのではないかと思えてくるのである。

サラも密かにルードヴィックに親しみを深めていき、そんなときにその彼に若い恋人ができると、無性に寂しい想いに陥る。そして、そんな中でホテルの前でこけてしまった彼女はそのまま入院、合併症を起こしてベッドに横たわる彼女につきそうルードヴィックにかつての夫の名前を呼ぶというクライマックスに至れば、完全にすべてが彼女の妄想世界だったのかとさえ思えてくるのである。

そしてサラが死に、ルードヴィックは駆けつけたサラの娘の横を通り過ぎて外で待つ恋人と肩を抱いて去っていく。途中に出会う老人たちに気持ちのよいほほえみや声をかけながら・・・。

ただ、個人的にどうもこの作品はまとまっていないという感想が先に立った。
途中からでてくるルードヴィックのかつての恋人、さらに新しい恋人の登場、この展開とサラとの関わりが何ともちぐはぐでつながってこない。もう少し語りようがあるのではないかと思えてくるのである。

全体を空想世界とすればそれはかまわないのかもしれないが、やはりラストでサラの死を描くのであるからどこかでリアルストーリーとしてまとめてほしいのである。
そんなわけで、ちょっと眠かったというのがこの作品への感想でした。