くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ポンヌフの恋人」「髪結いの亭主」

ポンヌフの恋人

ポンヌフの恋人
20年ほど前に見た作品ですが、当時はどうも眠くて眠くてほとんどストーリーを覚えていない。そこで今回デジタルニューマスター版でリバイバル公開されたので見に行きました。

お話はフランス、ポンヌフ橋で出会った二人の男女のピュアなラブストーリー。一人は火を噴くという大道芸で身を立てるホームレスのアレックス、もう一人は目の病気で失明が近い画学生のミシェル。

ポンヌフ橋で出会った二人はそれとなく惹かれるうちに次第に恋人同士になっていく。しかし、ミシェルの目が治るという知らせで、彼女はアレックスの元を去り、自暴自棄になったアレックスは彼女を捜すというポスターを貼っている男を誤って焼き殺してしまった門で警察に捕まる。

そして3年後、アレックスを留置所に訪ねたミシェルはクリスマスの日にポンヌフ橋で会おうと約束して去る。
クリスマスの日、二人は出会うが、どこか素っ気ないミシェル。留置所では一晩を赤そうとまで約束したにもかかわらず、夜中に帰るというマリオンを抱きしめて川に飛び込むアレックス。二人は走ってきた船に乗りそのままいずこへとなく旅立っていく。

二人が最初に出会った後にフランス革命200年祭であがる花火をバックに橋の上で踊り狂う場面、背後に”美しき青きドナウ”が流れるシーンの幻想的で美しいこと、さらにクライマックス、雪の降る橋の上で二人が抱き合うシーンのファンタジックなこと。しかもそんな美しいシーンの合間にジェット機が飛ぶ姿やなどドキッとするくらいの現代的なショットが挿入されたり、独創的な音楽の使い方など、どこか一筋縄で完成されたわけではないレオス・カラックス監督の個性的な感性が見事な作品でした。

とはいえ、今回も途中かなり眠かった。ストーリーの展開が、冒頭の出会い、二人の日々の物語、美術館で絵を見るミシェルとハンスのエピソード、さらにクライマックス、ミシェルがアレックスに合う前に挿入されるシーンで、目を治してもらった医師のドアを開ける意味ありげなシーン、などどこか繰り返されるストーリーがちょっと自分の感覚のリズムに合わないのかもしれません。結局、意味ありげなシーンの解説もないままでした。

個性的で良い映画ですが、ポンヌフ橋のセットの再現など大作であることにやや散漫になってしまったストーリー展開で、どこか吹っ切れて感動しない部分もなきにしもあらずでした。美しいシーンがもったいないくらいですね。


髪結いの亭主
こちらは見逃していた名作の一本。期待通りの秀作だったと思います。
パステル調の美しい画面に最初に目を奪われます。主人公アントワーヌの少年時代が語られ、浜辺のシーン、床屋での女主人にあこがれる少年の心の場面がほのかなエロスを漂わせて語られる道入部が実に好感。全体にエドゥアルド・セラの美しいカメラに酔いしれます。

少年時代を交互に挿入しながら、大人になったアントワーヌが愛する妻マチルドと出会い、結婚し、日々、愛をはぐくむ様を丁寧な演出と美しい画面づくり、そしてにおうばかりのエロティックな演出で描いていく本編が本当に人間味のある展開で引き込まれてしまいます。

時々、主人公がカセットでかけるアラブ系の音楽、それにあわせておどけて踊る姿もまたストーリーの中にスパイスになって飽きさせないエンターテインメントにもなる。

そして幸せの絶頂で、マチルドは雨の降る町へ飛び出し、人生で最高の今、自ら死を選ぶべく川に飛び込むクライマックスが本当に切ない。
妻の死後、一人店で残るアントワーヌ、そこへやってくる客、客と二人でアラブ音楽で踊るアントワーヌ、そして「すぐに妻が帰りますから」と告げて、客と二人で待つ様子を真上からとらえるショットで映画は終わります。

愛する妻を亡くしたアントワーヌのあまりの悲しみが見事に映し出された名場面ではないでしょうか。見終わって、何ともいえない感動が残る秀作だったなぁとつくづく思いました。良い映画でしたね