くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「リベンジ・マッチ」「レイルウェイ 運命の旅路」

リベンジマッチ

「リベンジ・マッチ」
映画作りなんて、楽しければいいじゃない。みんなが、ただ、ふらっと映画館にやってきて、軽く楽しんで劇場をでる。そんな映画があってもいい。そう叫びかけてくるような作品でした。

かつて、ライバルだったキッドとレーザーという二人のボクサー。結局、決着が付かずに、お互いボクシングをやめて30年たったところから映画が始まる。

これを金儲けにと、プロモーターからの依頼で、再びリングに。そして、よぼよぼになった60歳を越えた老ボクサーの悲しいほどに滑稽なトレーニングが始まる。当然「ロッキー」や「レイジング・ブル」という、リアルに若き俳優時代に演じたボクシング映画の名場面をパロディながら、私のような映画好きには、このかつての大スターの、惜しげもなくさらす醜態が、とにかくほほえましいし、そして、勇気をもらえる。

人間ドラマなんて薄っぺらいだけで、なんの深みもない映画ですが、クライマックスの試合のシーンで、倒れた相手を助け起こすなんて前代未聞の展開に、胸が熱くなったりするのだから、本当に、これが、娯楽映画の本当なのではないかなんて思うのです。

徹底的に遊んで、楽しんで、面白がってる子供のようなスタローンとデ・ニーロが目に浮かぶような作品だった。ある意味、妙な凡作より傑作かも・・・・。


「レイルウェイ 運命の旅路」
とにかく、カメラが実に美しい。主人公工リックの家を、横長の画面でシンメトリーにとらえるカット、彼方から走ってくる列車をゆっくりとらえるショット、タイとビルマにかかる長大な鉄橋のシーン、等々美しい構図に、色彩にこだわった配色、人物の配置などに目を奪われる映像である。

そして、幻想と現実、過去と現在を巧みにカットバックさせながら、巧みに編集していく映像演出のうまさも目を見張る。人間ドラマとしても、極端に描くべきところは度をすぎたような演出でテンポをつけ、詩編のようなせりふを絡ませて語るシーンも間に挿入したストーリーテンポもうまい。

ただ、難をいうと、あくまで実話とはいえ、主人公で、拷問を受けた側のエリックの原作を元にしているために、最後の最後まで視点がエリック側から描かれていることである。まぁ、それは、実話という部分を考慮すれば、目をつぶってもいいかもしれない。それほど、映像作品としてのクオリティが抜群だからである。

映画は、一人の男エリックが、床に横たえ、独り言をつぶやいている。そして、彼は第二次大戦の時に日本軍に受けた拷問がトラウマになり、時として幻想を見るのである。友人のフィンレイもまた同じ境遇で、当時の話をできる唯一の友人である。

列車が好きなエリックは、いつも時刻表をみた楽しんでいて、そのシーンにかぶって、列車の中で一人の女性パティと知り合い、やがて、親しくなり、結婚するまでの下りが、スピーディーなカットで描かれる。この展開が実に見事である。

ところが、夫婦生活の中、時として、シンガポールで拷問にあったことを思い出してうなされるエリック。やがて、フィンレイから、当時拷問をした永瀬という日本人が、タイで生きていることを知らされ、タイへいくことにする。ストーリーの本編がこの部分で、物語の後半部分になるのだ。

そしてフィンレイはこのことを告げて首をつり自殺するこのシーンのショッキングさも、登場位置がうまい。

物語は「戦場にかける橋」で取り上げられた、クワイ川に日本軍が米英軍捕虜を使って完成させた工事をその背後においている。こちらは、史実を元にしたフィクションで、橋が爆破されるという作り話を最大のクライマックスにした超大作であるが、実際は、橋は健在である。

今回の「レイルウェイ 運命の旅路」は人間ドラマなので、スケールを比較すると、スペクタクルとはいえないが、作品の質は非常に高く、映画賞を目指してもいいほどの完成度だといえます。ただ、さっきも書きましたが、エリックの視点による復讐劇の色合いが強く、最後の最後に、永瀬を許すシーンで映画的な落としどころにした感がないともいえない点だけが引っかかります。それでも、本当にいい映画だったと思います。