くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「大地のうた」「大河のうた」

大地のうた

「大地のうた」
ベンガル地方に住む貧しい家族の物語をピリピリするほどの鋭い感性で叙情豊かに描いたサタジット・レイ監督の傑作。初めてみたのは30年ほど前であるが、さすがにしんどかったという印象しかなかった。今回再見してもやはりしんどい物語であったが、サタジット・レイ監督の研ぎすまされた映像表現にうならざるを得ない結果となりました。

感情の動きや物語の展開を次々と挿入する景色のインサートカットなどで的確に映像として画面に映し出していく。まさに芸術映画と呼ぶのにふさわしい語り口で貧しい一つの家族が必死になって生きていく姿を伝えていく手腕はこれこそが映画史の残る傑作と呼べるにふさわしい一本でした。

物語が始まるとこの家族の一人娘ドガが登場、そこへ同居している夫の姉、すでに年老いドガをこよなく愛している。
まもなく、この三部作の主人公になるオプーが生まれる。
こうしてこの姉弟の物語を中心に、必死でいきる家族の様子が描かれていく。

村を少し離れると汽車が走っていたり、その景色を見るときにススキのような草原の中でドガとオプーが戯れるくだりが実に美しい。
やがて、年老いたおばさんは死に、姉ドガも死んでしまう。
出稼ぎにいっていた夫が帰ってくるも訃報に涙ぐんで家族はベナレスへ移住することを決意する。

素朴な物語ですが、いまだに古さを感じさせない物語はストレートに私たちの旨に感動を呼び起こしてくれました


「大河のうた」
オプーと両親がベナレスへ移住した1920年から物語が恥あります。
しかし、程なくして夫が病で死に、母とオプーの二人暮らしになってしまう。

学校へ行き始めたオプーは成績優秀で、学校からカルカッタでさらに勉強するように勧められ、母を一人残してオプーは旅立つ。毎日孤独にくれる母の姿とすでに青年になったオプーの青春が描かれるのがこの第二部。

都会を舞台にしているために自然の描写を多用した第一作とは趣の違う映像表現に変わっているとはいえ、依然、鋭い感性で演出された画面は実に繊細なオプーと母の感情を見事にスクリーンに紡いでいきます。

物語が単調なので、正直しんどいときもありますが、母への思いと自分の未来への希望で微妙に揺れるオプーの姿が胸に突き刺さるほどに迫ってくると同時に、息子の将来をじゃましないようにと必死で強がるも、すでに一人になった母の何ともいえない寂しさが胸を打ちます。

ラスト、年老いて病弱になった母はオプーへの思いを残しながら先だってしまい、母の死に直面するも一人カルカッタへ戻っていくオプーの後ろ姿で映画は終わります。

心理描写が映像として伝えられてくるという見事さは前作同様見事なもので、いつの間にかオプーとその家族の行く末にのめり込んでいる自分に気づかされるラストに感動してしまいます。