くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「大鹿村騒動記」「ムカデ人間」

大阪村騒動記

大鹿村騒動記」
阪本順治監督作品、長野県、300年の伝統がある大鹿村に伝わる村民歌舞伎を背景に、コミカルに、そしてたわいもなく展開する小さな田舎の村の人情ドラマである。

降ってわいたような作品なのですが、初期の阪本順治らしいさりげない笑いや人間ドラマにほっとほのぼのさせてくれる小品でした。

一台のバスがやってきて、一組の男女とオカマっぽい青年が降りてくるところから映画が始まります。
男女のカップルはかつて親友善ちゃん(原田芳雄)の妻貴子(大楠道代)と駆け落ちした治(岸部一徳、)がアルツハイマーのようにぼけてしまった貴子を善ちゃんに返しにやってきた。オカマっぽい男の子は性同一性障害の青年、これから男としていきるか女の子としていきるか決めるために善ちゃんの店のバイト募集のチラシに引かれやってきた。

村人全員が歌舞伎の舞台役者で、その練習に暇がない。後数日に迫った開演まで、どたばたとコミカルな展開が悔い返される。松たか子、石橋蓮次ほか芸達者な役者が勢ぞろいして絶妙の間で繰り返されるせりふの応酬が何とも心地よい。

軽いタッチのドラマなのでとやかく言う必要はないけれど、ちょっと笑いのシーンに切れがないのが残念。笑えるのだけれど、もう少し生き生きと笑いがちりばめられても良かった気がします。でも、逆にそれがねらいというとらえ方もある。

とはいえ、きれいにまとまったいやされる一本であることは確かで、これはこれで良かった気がします。
と、見て帰ってきたら原田芳雄さんの訃報が夕刊に載ってました。すごくショックでした

ムカデ人間
よくもまぁ、こんな映画を輸入したものである。それに公開して東京では連日大入り満員の盛況。そんな話題がどこか理解できる不思議に曳かれる映画で、ゲテモノ映画とわかっていて見に行ったのです。

確かに、ゲテモノ映画である。シャム双生児の分離手術で有名な外科医がマッドサイエンティストとなり、今度は三人の人間をくっつけるという野望に目覚め実行するのだから、聞いただけでも目を背けたくなる。しかも、三人を肛門と口をつないでムカデのようにしてしまうというのだから発想も完全に変態である。

ところが、アメリカのこの手のスプラッターなゲテモノ映画と違い、ちょっと哲学を感じさせる。まぁ、作った監督がどことなく、神と人間という存在のテーマにそのクライマックスで迫っていくのだ。笑ってしまうけれども、これもまた三流映画のある意味常道なのかもしれない。

映画が始まる。ハイウェイが森の中を抜けて走っている。一人の男が脇に車を止めている。主人公のハイター博士である。後ろに止めたトラックから降りてきた男をつけて、催眠銃で眠らせる。そしてタイトル。

夜、森の中で道に迷った二人の女。車が動かなくなり、ようやく見つけた森の中の大邸宅。なんとハイター博士の家である。
そこで眠らされ、ベッドで横たえられるが、先ほどの運転手とこの女二人ではどうやら適合しないらしく、新たに別の人間、これが日本人。を捕まえ、とうとうムカデ人間を作ってしまう。なんとも、爆笑であるが、非常に展開が早い。しかも、結合部は包帯で覆われ、CGなどでリアル感など出そうとしない素直さがいい。

先頭が日本人で、やたら関西弁で悪態をつく。一番後ろの女はやがて具合が悪くなってきて瀕死の状態になり始める。
そんな時、近くで行方不明者が続出している捜査で刑事がやってくる。

この刑事も捕まえてやろうとハイター博士は薬を盛ろうとしたり注射器で眠らせようとするが、なんとも鈍くさくてばれてしまう。・・・・爆

一方のつながれた三人は先頭の男の機転で、ハイター博士に瀕死の重傷を負わせ、逃げようとするが、這うように追いかけてきた博士と一騎打ち?となる。と、突然、男が神と人間の話をし、博士を圧倒した後、ガラスで自殺してしまう。

一度は退散した刑事が再びやってきて博士の悪行を発見するも返り討ちされ、同士討ちで死んでしまう。
残されたムカデ人間、一番後ろの女も死んでしまい。前後に死体をくっつけられたまま、真ん中の女の悲鳴ともうめき声ともいえない声が響く中映画は終わる。・・笑

時に、カメラがまっすぐに画面をとらえたり、ラストの屋内プールでの博士と刑事の撃ち合いなど、どこかスタイリッシュな演出も見え隠れする。この手の映画のおもしろさはこういうところにもあるのでしょうね。

この映画を見たのは時間の無駄だったのか、いや、こんなばかばかしい映画を見たという達成感か、微妙な気持ちで映画館を後にしました。