くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ドクトル・ジバゴ」

ドクトル・ジバゴ

30数年ぶりにみた、さすがに忘れているシーンはたくさんあったが、やはり「アラビアのロレンス」同様、大人の映画であると実感しました。

ロシア革命を背景に描かれる壮大なラブストーリーは、単純な物語に終始せず、革命批判や兄弟愛、さらに家族の絆、人間の生き方まで追求した重厚な物語として完成されている。しかも、デビッド・リーンならではの映像へのこだわりはこの作品でも目を奪われるほどにすばらしく、ロシアの大雪原、咲き乱れる花花の美しいショット、そして、雪や氷とろうそくの炎が醸し出す寒々としたロシアの生活感などため息がでるほどに美しい。

そして、パーティの席でトーニャ(ジュラルディン・チャップリン)とラーラ(ジュリー・クリスティ)との出会いのシーンの見事なリズム感もこれぞ巨匠の貫禄と呼ばざるを得ません。
窓ガラスのそばでともしたろうそくの炎が次第に窓の氷を溶かし、外で起こる革命の兆しをのぞかせるショットなどは絶品です。

黄色の花をラーラに見立て、白い花をトーニャに見立てた詩的な人物描写もすばらしい。
映像テクニックのレベルでは「アラビアのロレンス」よりも秀逸でポエティックではないかとさえ思われる。

モーリズ・ジャールの名曲がそこかしこに流れ、じわりじわりと変化してくるロシアの激動の時代の不穏な空気と重なって、壮大かつ詩的な一人の男の物語は実に芸術的に映像として完成されていく。これぞ名作。これぞ歴史的大作である。見に行って良かった。