「海辺の金魚」
小品ですが、淡々と流れるストーリーと、丁寧な映像作りが好感の一本。花と晴海を演じた二人がとっても透明感があったのが良かった。監督は小川紗良。
浜辺で叫ぶ花の姿からタイトル、そして海辺に立つ養護施設へ移って映画は始まる。今日、新しく晴海という女の子がやってきたが、なかなか打ち解けない。そんな彼女が気になる花。花はこの日18歳の誕生日だった。なかなか打ち解けない晴海に花が関わるうちに、晴海の背中に虐待の跡を見つける。
次第に心を通わせ、花を慕うようになる晴海。ある時、一時帰宅で晴海は帰ったが、なぜか、延長になって、決めた日に施設にもどって来なかった。不審に思った花は資料から晴海の家を見つけ、迎えに行き二人で浜辺の船の中に隠れる。しかし見つかってしまい、晴海は児童相談所へ、花は施設に戻される。
途方に暮れる花は、金魚鉢から金魚を掬い海に放してやる。そこへ、晴海が帰ってきて二人は抱き合って映画は終わる。非常にシンプルで素朴な映画ですが、何気ない心の動きを丁寧に演出した手腕は評価できます。花の過去をさりげなくさらりと流し物語に色合いを含ませたのも良かった。一時間余りの小品ですが、良質の作品でした。
「幸せの答え合わせ」
しっかりした構図と絵作りの美しさ、さらに芸達者二人の熱演と、踏み込んだ演出はなかなかの逸品でしたが、どう見ても、妻のグレースに共感できず、エドワードばかりを悪者にしたような視点が気になったのは私だけでしょうか。監督はウィリアム・ニコルソン。
浜辺で、幼い頃の息子のジェイミーを見つめるグレースのシーンからシーンが変わる。グレースとエドワードは29年寄り添った夫婦で、この日もいつものようにエドワードが朝食の準備をしている。グレースは、何かにつけエドワードに食ってかかり、言葉を交わしたいと迫る。エドワードは息子のジェイミーを招く。ジェイミーはここしばらく実家に戻っていなかった。
ジェイミーが来た夜、グレースはいつものようにエドワードに責め寄り、逃げるように部屋に行ったエドワードを見るにつけ、テーブルをひっくり返して切れてしまう。どう考えてもうるさすぎる妻にしか見えない。そんな母をいたわるジェイミー。
翌朝、エドワードはジェイミーに、グレースと別れるつもりだと告げる。そして、ジェイミーが席を外している間にエドワードはグレースに別れようと告げるが、執拗に食い下がり破綻を防ごうとするグレース。あれだけ夫を責めておきながら、なんとも勝手な女だという印象から物語は本編へ。
エドワードには一年前から愛し合ったアンジェラという女性がいた。そのことも聞いたグレースだが、なんとか修復する義務があるとさらに責めるが、エドワードは黙って家を出て行く。ジェイミーはグレースを気にして週末には顔を出すようになる。
やがて、財産分与なども含め書類がグレースに届くが、エドワードと一緒にサインすべきものだと食い下がる。さらに、犬を飼って、エドワードと名前をつける。そんな母を心配するジェイミー。
グレースはエドワードと同席して弁護士のところへ呼ばれるも結局サインすることなくもの別れに終わる。グレースはアンジェラの家に押しかけ、エドワードに迫るが結局アンジェラに説き伏せられて、その家を後にする。エドワードは後を追いかけ、友達として付き合うかというがそれを拒否するグレース。心配するジェイミーがグレースを抱きしめるて映画は終わっていきますが、どう考えても、グレースの方が非があるように見えてしまう。何かにつけキリスト教の宗教観を持ち出したりするグレースの存在がかなりくどいし、アンジェラの家に押しかけるところはサイコパスのレベルになっているように見える。
シンメトリーな構図や美しいカットも多用した作品なのですが、どうも、私には好みの映画ではありませんでした。
「シンプルな情熱」
一人の男にのめり込み、息子も仕事も投げ打ってひたすらSEXしてもらいたいと溺れる人妻のなんとも淫乱な映画という感じでしたが、これを純粋なラブストーリーと捉えるだけの余裕はない。ひたすら濡場の連続には流石に参りました。監督はダニエル・アービッド。
一人の女性エレーヌの顔のアップから、思い出のホテルについてつぶやく場面から映画は始まり、あとはひたすらエレーヌとロシア人のアレクサンドルとのSEXシーンが繰り返される。ポールという子供がいるにもかかわらず、アレクサンドルからの連絡を最優先にするエレーヌ。物語はとにかくシンプルにSEXシーンの連続。
大学の教師であるエレーヌは、授業中でもアレクサンドルからの連絡を待ち、仕事中もポールの事も後回しにする日々。アレクサンドルが仕事でエレーヌのところに来ない時間があると、イライラして普通で無くなって行くエレーヌ。
ある時からアレクサンドルからの連絡が完全に途切れ、精神的にも参ったエレーヌはポールの事もできなくなり、元夫が迎えにくる。仕事を休み、ロシアまで探しに行くが、結局アレクサンドルに会えない。そして八ヶ月がたち、ポールとエレーヌが普通の生活をしていたが、突然アレクサンドルから連絡が入り、エレーヌはポールを友人のところへ追いやり、アレクサンドルを自宅に引き込みSEX、そして、アレクサンドルのホテルに送ったエレーヌはこれを最後にと決心する。
と、綺麗なラブストーリーのつもりで作ったのだろうが、尻軽女エレーヌの淫乱な恋にしか見えないのがなんとも残念な映画でした。