くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「シベールの日曜日」「スーパー!」

シベールの日曜日

シベールの日曜日
大好きな映画の一本で、午前10時の映画祭で大スクリーンで見直すことができたのはうれしい限りでした。
かなり以前に見た映画なのでかなり忘れている部分もありましたが、アンリ・ドカエの美しいモノクロ映像、セルジュ・ブールギニョンの繊細な演出はやはりすばらしいですね。

映画が始まるとポジ処理された荒い画面で主人公ピエール(ハーディ・クリューガー)が飛行機に乗っている。どこかへ爆撃しいっている姿のようでたぶん戦争のさなかでしょう。あちこちを爆撃の後次の標的へと迫ったとき一人の少女と目があってしまい、少女の叫ぶ姿で暗転、タイトルになります。
このあたりが、見直して思い出すのですが、やはり忘れていました。

夜の駅で恋人マドレーヌが仕事から帰るのを待つ主人公ピエール。そこへ一組の親子が降りてくる。娘は12歳のフランソワーズ(シベール)、父は彼女をこの地の寄宿学校へ娘を連れてきたのである。しかし、父と別れたくないフランソワーズ(パアトリシア・ゴッジ)は泣きながら抵抗する。その様子をみたピエールは彼女にガラス玉をあげようとする。初めてピエールにあったフランソワーズがにこっと笑うショットが実に愛くるしい。

結局、父に拒否され、つれていかれるフランソワーズの後を付け修道女が先生をする寄宿がっこおうまでついてくるピエール。
そそくさと修道女に預けた父は逃げるように駅へ、最後に毎日曜日に会いに来る約束をするがたぶんこない。

父親の本心を書いた手紙の入った鞄を渡し忘れ、門の前に置いて立ち去るが、その鞄をピエールは預かる。
そして、翌日、父と称してフランソワーズに手渡す。
こうして、毎日曜日、父に成り代わりフランソワーズと会う日々が続く。

ピエールにはマドレーヌという恋人がいるし、戦争の後遺症で時々不安定な精神状態になる。しかし、そんな彼は毎日曜日フランソワーズと遊ぶひとときが心を癒すようになっていく。
池の畔で、純真に笑うフランソワーズ、彼女と戯れる私服の時を過ごすピエール。池の波紋の中に写る二人の姿をずっととらえるアンリ・ドカエのカメラの美しいこと。

フランソワーズはピエールに本名を語らず、修道女が付けた名前で呼ばせる。教会の風見鶏を取ってくれたら本名を話すと無邪気に笑うフランソワーズにいつの間にか恋心さえ生まれるピエールの表情が微妙に美しい。

そして、お互いに会っているうちに、父の代わりというより恋人のようにピエールに嫉妬するフランソワーズ、そして、一方のピエールもフランソワーズを独占したいという気持ちの高ぶりが徐々に高揚してくる。

純粋という言葉の本当の意味を誰が知るのか、そんな至上の愛の姿をモノクロームの景色と美しい木々の影、さらに池の透き通った水の姿などでまるで叙情詩のごとく紡いでいく物語は本当にみている私たちまで心が透き通ってくるような感覚にとらわれてきます。

そしていよいよクライマックスのクリスマスイブ。フランソワーズにクリスマスパーティを計画し、知人の家から巨大なクリスマスツリーを担いで廃屋に準備するピエール。そこでフランソワーズはプレゼントとして自分の本名「シベール」の名を空かします。一方のピエールは教会の風見鶏を盗んで・・・

と、そんなことと知らないピエールの恋人はピエールがいなくなったことを心配し、友人に相談。もともとピエールのことを精神異常と考える友人は警察に届けてしまう。そして、ピエールが占い師の部屋から盗みシベールと大事にしていたナイフで遊んでいるところをみた警察が勘違いし彼を撃ち殺してしまう。

警察が撃ち殺すシーンは映されません。ピエールの恋人のところに「彼を殺した」という警察からの連絡に絶叫する彼女が映されるだけです。

そして、最愛のピエールが死んだことをみたシベールは警察に「もう私に名前はありません」と答えます。
ただ、純粋に牽かれ合い、恋愛であったかどうかはともかくも心と心がなんのわだかまりもなく美しくつながった二人を引き裂いたのは、透き通った純粋さを忘れてしまった世の中の人々の醜い偏見であったかもしれないというラストシーン、すばらしいですね。

冒頭の戦争のシーンからエンドタイトルまでこの映画の一貫したテーマが美しすぎるピエールとシベールのの関係と見事なカメラで描ききられたこれぞ名作と呼ぶにふさわしい一本でした。

「スーパー!」
素人ヒーローにその相棒の少女、この設定をみるといかにも「キック・アス」の二番煎じのごとくであるが、作品としてはかなり異質なタイプで、どちらかというと「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」のエドガー・ライト監督が描く世界に似たパターンの作品でした。

下品な映像とコミックのような吹き出しの挿入、これでもかと見せるグロテスクなショットの連続はまさにB級映画の典型かつ好きな人には熱狂的なファンとなるべき一本なのです。ただ、キャストがすごい、レイン・ウィルソンリヴ・タイラーエレン・ペイジケビン・ベーコン、など一流どころがそろっている。

にぎやかなアニメーションのタイトルバックが終わると、主人公フランクのしがない日々と懐かしい過去がナレーションされる。愛妻のサラとの仲も今やさめてしまい、サラは再び薬漬けとなっていく。そして、町のチンピラジョック(ケビン・ベーコン)の元へ。

妻を取られたフランクはなんとか取り戻そうとするもどうしようもない。
そんなある日、幻影に神に頭の中の脳にふれられた妄想を見て、テレビのふざけたヒーローものに触発されて素人ヒーロークリムゾンボルトとなる。

とまぁ、ありきたりの展開で、当然のように強くもないのだが、やるごとがむちゃくちゃで、ハンマーのようなもので悪人を殴り倒すというグロテスクなもの。
そんなある日、アニメショップの店員リビー(エレン・ペイジ)と知り合う。

ジョックの本宅へ一人で殴り込み、銃で撃たれてリビーのところへ逃げ込んでから、リビーもボルティとして助手になる。お気楽な展開はこの手の映画の典型で、時々繰り返されるささやかなおふざけの笑いがなんとも心地よいのですが、グロテスクで、汚いものを隠そうとしない演出はちょっといただけないところもある。

そして、いよいよクライマックス、ちょっと悪のりしてしまうリビーを相棒に再びジョックの自宅へ。
ところが進入の時に撃たれてあっけなくリビーは即死。怒り狂ったフランクはみるも鮮やかにジョックを倒して最後にサラを助け出すが、これまたハッピーエンドにならず、サラは二ヶ月後に出ていって別の男と幸せになってしまうというエピローグ。

一人悦に浸り、正義を貫くフランクの姿でエンディング。

キック・アス」とは種類の違う映画なので、比べるのはお門違い。この映画はこの映画で笑いとストーリーを楽しめるし、こういうおバカな映画は大好きなのでぜんぜん退屈しない。ただ、エレン・ペイジのおバカ加減はもっと吹っ切れてもよかった気がするのはちょっと物足りない。
それに、最初に出てくるテレビのおバカなヒーローももう少し終盤に何らかの登場をしてほしかった気がします。