くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「幸福な結婚記念日」「大恋愛」「ボクは五才」「リキッド・スカイ」(4Kリマスター版)

「幸福な結婚記念日」

結婚記念日をコミカルに描いた短編で、オーバーラップして行くユニークな場面の連続がとっても楽しい作品でした。監督はピエール・エテックス

 

テーブルの上に食器を並べる妻。今日は結婚記念日らしく、それらしいプレゼントや料理を準備している。一方夫は、ピレ前途など買い込んで車に乗ろうとして、前戯に停車されていて出られない。なんとか車を出すがすぐに大渋滞に巻き込まれ、ようやく花屋へ辿り着いて花束を買うが、またトラブル。自宅に帰るまでのドタバタを、関わってくる車のエピソードをオーバーラップし繰り返しながら、ようやく自宅に着くと、待ちくたびれた妻は料理を食べお酒を飲んで眠っている。そっとプレゼントを置き、残ったパンを口に運んで映画は終わり。

 

小気味良い展開にあれよあれよと見終わる一本。

 

「大恋愛」

洒落たユーモアが所狭しと散りばめられ、ドタバタのようでどこか洗練された笑いの中、時に俗っぽく時に微笑ましい恋愛ドラマが展開する様は絶品です。楽しかった。監督はピエール・エテックス。初カラー作品。

 

空撮で延々とタイトルバックの後、教会での結婚式の場面から映画は幕を開ける。主人公ピエールと妻フロランスの式。列席の面々の様々な態度をコミカルに挿入しながら、ピエールがいかにしてこの結婚に至ったかがまず語られる。過去の様々な女性たちのと恋物語の後、フロランスと出会ったピエールはあれよあれよと結婚することになった。そしてこの日を迎え無事式も終わる。そして10年の歳月が流れる。

 

今や円熟期に入ったピエールとフロランス、フロランスの父の会社を引き継いだピエールは忙しい日々を送っている。夫婦仲は順風満帆だが、ゴシック好きのマダムたちに浮気の噂を立てられ、妻は実家に帰ってしまう。しかしまもなくして戻って来る。そんな頃、会社の古参の秘書が辞めることになり後任に若いアニエスがやって来る。アニエスの若さと美貌に打ちのめされたピエールは、なんとか彼女を射止めようとする。この奮闘劇が物語の中心となる。親友のアドバイスを受けながら猛攻。ベッドが車のようになって戸外に走り出すシーンなどがまず楽しい。

 

ある日、妻は二週間海に行きたいと言い出しピエールは歓喜する。そしてアニエスをなんとか食事に誘い出すも、友人のアドバイス通りに会話したのは仕事の話ばかり。結局、アニエスへの気持ちはうまく伝わらず、彼女を送る。やがて妻が帰宅の日、駅に迎えに行ったピエールは、いきいきしたフロランスを出迎えて、すぐに痴話喧嘩を始めて映画は終わる。

 

心地良いコメディで、ベッドのシーンや、アニエスとの会話の中ピエールはどんどん歳を取ったり、友人とピエールが入れ替わってみたりと映像テクニックを駆使してのコミカルなシーンのテンポが抜群に良くて、ラストシーンまで画面に魅せられてしまいます。リズミカルな洒落た恋愛コメディというイメージの作品でした。

 

「ボクは五才」

ほのぼのゆるゆる、古き良き日本の風景をそのまま映画にした作品で、クオリティやどうやという余計なもののは入る余地のないのどかな作品でした。監督は湯浅憲明

 

四国は高知の片田舎、一人の少年奥村太郎は大勢の子供達と一緒に祖父母の家で暮らしている。時は1970年大阪万博の年、二年前に父親に大阪に連れて行ってもらった太郎はそれが幼稚園での自慢だった。しかし、幼稚園の友達の一人が万博を見に大阪へ行ったことから太郎の唯一の自慢がなくなってしまう。

 

落ち込んだ太郎は無性に父親に会いたくなる。太郎の母はすでに亡く、父は大阪に出稼ぎに出て長い間帰っていなかった。太郎は大阪に行くべく何度も家出をするがその度にたばこ屋のおばちゃんや路面電車の車掌さんやらに捕まり連れ戻されていた。太郎は知恵を絞り、日曜の早朝に脱出することを計画、まんまと運送のトラックに忍び込み村を出ることに成功する。頼りは大阪に行った時に書いたスケッチだけだった。

 

脱走した太郎を追って、たばこ屋のおばちゃんや祖父母が後を追いかけるが、太郎は遊覧船やフェリーを乗り継ぎついに本土へ到達。そしてなんとか大阪に着く。ところがやっと見つけた父のアパートはすでに二日前に引っ越していた。落胆する太郎の前に、忘れ物をとりに戻った父がやって来る。取ってつけたような展開。そしてやっと再会。梅田で立ち往生している祖父母を迎えに出て映画は幕を閉じる。あれ!たばこ屋のおばちゃんはどうした?

 

懐かしい大阪の風景、高知の風景、当時の交通事情などレトロ感満載の古き日本映画。それをただ楽しむだけの映画ですが。とっても面白かった。

 

「リキッド・スカイ」

サイケデリックな色彩と電子音をバックに、ドラッグとSEXを描いて行くまさにカルトSFという一本で、主人公の住む室内を中心に展開する様は本当に独特のチープ感です。監督はスラヴァー・ツーカーマン。

 

一機の小さなUFOがニューヨークのビルの屋上に到着する。そのそばの部屋に能面のようなオブジェが飾られていて、エイリアンの視点でそれを覗く。主人公マーガレットがクラブで踊っている場面から、細かいカットで、ドイツから来たエイリアン研究の博士ホフマンとその恋人らしき女の部屋、それと、もうひと組の部屋が繰り返し描かれて映画は幕を開ける。

 

マーガレットが自宅に戻ると、何やらUFOから不思議なエイリアンらしき視点でマーガレットに乗り移る描写がされる。彼女はエイドリアンという女性と同棲していて、どうやらレズビアンのようだが、マーガレットは男とのSEXにも興味がある。その部屋をホフマン博士と恋人が望遠鏡でのぞいている。

 

マーガレットは中年の男性を引き込みSEXをするとその絶頂で男性は息を引き取る。頭にはクリスタルの矢が刺さっている。エイドリアンとマーガレットはその男性の死体を段ボール箱に詰めてベランダに出す。その様子をホフマン博士らが見ている。そして、エイリアンはドラッグを餌にしていたが、人間がオーガズムに達する際に脳内に分泌されるアヘンに似た物質を餌にすることを覚えたらしいと解説する。

 

マーガレットはモデル撮影の予定があり、大勢のスタッフがマーガレットの部屋にやって来る。中の一人とSEXしたマーガレットはその相手を殺し消してしまう。続いてエイドリアンともSEXし、エイドリアンも消してしまう。マーガレットはクラブに行き男を物色しては連れ帰り殺してしまう。それを見ていたホフマン博士はマーガレットの部屋に駆けつけるが、ホフマン博士の警告を聞かないマーガレットはホフマン博士を刺し殺す。それを見ていたホフマン博士の恋人も駆けつける。もう一人女性も駆けつける。この女性がよくわからない。

 

マーガレットは自らオーガズムに達せられないのでドラッグを打ち屋上のUFOの前に立ち、踊り狂うと、UFOから光が出てマーガレットを消してしまい大空に飛び去る。それを見つめる二人の女のカットで映画は終わる。って、どういうこと?というエンディングである。

 

まさにカルトSFで、どういう物語かという辻褄は全くなく、主人公たちの中性的な姿と、蛍光を使ったメイキャップ、派手な光の演出と電子音楽が生み出すサイケデリックな世界観を楽しむ一本という感じです。SFである必要があるのかという映画でした。