くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「美しき小さな浜辺」(デジタルリマスター版)「子猫をお願い」(4Kリマスター版)

「美しき小さな浜辺」

小さな浜辺のそばに建つホテル、降り続ける雨、孤児の不幸な人生、殺伐とした風景、そんな寂しい世界をひたすら描いていく映画で、主人公が犯してきた犯罪の背景も、ドラマも見せるわけではなく、アンリ・アルカンのモノクロのカメラが美しい映画でした。監督はイブ・アレグレ。

 

海辺の道を一台のバスが走ってくる。バスに乗っている一人の若者ピエールが、寂れたような街に降り立つ。夏場は賑やからしいが、冬の今は寂れた雰囲気で雨がしとしと降っている。一軒しかないホテルにやってきたピエールは、夕食も食べずに部屋に入る。ホテルには孤児院育ちの女中マルトと少年がいた。翌日、車でもう一人の男がやってきてホテルに泊まる。彼は何かにつけてピエールの行動を監視し始める。

 

ホテルの少年は、早朝ポンプで水を汲み、ホテルの主人にこき使われている風である。ピエールはそんな少年の姿に過去の自分を見ているようだった。ホテルの主人がレコードをかけると、ピエールは狂ったようにプレイヤーを壊してしまう。どうやら、レコードの歌声の女性に関わりがあるらしい。新聞記事でその女性がパリで殺されたと書かれている。

 

ピエールはマルトと親しく話すようになるが、ピエールがかつてこのホテルで働いていたのを薄々察したからだった。後からやってきた男は車をマルトの父ジョルジュの工場にあづける。ピエールはその男と話し、その男はパリに戻る事にしたという。どうやらピエールが犯した犯罪に関わっているらしい。男はジョルジュの工場から警察に連絡を入れる。それを見ていたジョルジュは、マルトにピエールを探させ、翌朝ここを通るトラックでベルギーに逃げろとアドバイスする。

 

ジョルジュの部屋で一夜を明かしたピエールは、一人浜辺に行こうとする。途中、水汲みをしている少年に、自分も孤児で、かつて同じ毎日だった。自分は道を誤ってしまったが、お前は辛抱して良い人生を歩めと言い、浜辺のかつて自分が作った小屋に向かう。

 

少年はマルトにことの次第を話す。トラックがやってくるがピエールが見当たらないので、ジョルジュもトラックを先に行かせる。浜辺の小屋に少年が行き、そこでピストルを見つける。ピエールは自殺したらしい。ホテルに泊まっている夫婦が浜辺にやってきて、感慨に耽る様子をカメラが写し、どんどん引いていって映画は終わる。

 

具体的な事件やドラマを語る作品ではなく、寂しい小さなしかし美しい浜辺の景色を一人の青年の人生を通じて描いた詩篇のような作品で、映像をただ感じ取って楽しむ作品だったように思います。

 

子猫をお願い

韓国の若者達の考え方が少しづつ変化してきた時代のとっても爽やかな青春映画という感じの一本。さりげない物語ですが弾けるような若さが散りばめられていて、見ていてとっても心地よい空気に包まれました。青春映画の名作という言葉がぴったりの映画でした。監督はチョン・ジェウン

 

高校最後の一時でしょうか、五人の同級生テヒ、ヘジュ、ジヨン、ピリュ、オンジュらがはしゃいでいる場面から数ヶ月後、それぞれが大人としての生活を始めたところから映画が始まる。祖父母と暮らすジヨンは、生活が苦しくて、仕事を探すの日々、実家がスーパー銭湯のような仕事をしているテヒは、家族の中では疎外感があり、家族にいいようにこき使われている。父のコネで証券会社に入ったヘジュは、忙しいながらも、ただの小間使いのような仕事をさせられ、不満を持っている。ピリョとオンジョの双子の姉妹も、祖父らから両親が疎まれて、二人で暮らしている。ヘジュの誕生会で集まった時、ジヨンは、街で拾った猫テイテイをプレゼントするが、ヘジュの家では飼えなくて翌日ジヨンに返しにくる。

 

物語は、それぞれ別々の生活を始めた仲良し五人が、時に会っては愚痴を言い、大人の世界に馴染もうとしながら、ファッションや恋、家族、人間関係に戸惑い成長する姿を描いていきます。仕事がないジヨンはなんとか見つけた食堂の仕事で遠方まで出かけるようになるも、自宅は欠陥住宅だが家主は全く対応してくれず苦慮している。五人で買い物に出かけても、羽ぶりのいいヘジュは好き放題に買い物をしてジヨンは戸惑ってしまう。

 

五人がオンジョらのアパートに集まって騒いだ後、ジヨンは一人先に家に帰るが、戻ってみると、住宅の屋根が落ちていて、祖母らは亡くなっていた。しかし、警察の事情聴取に黙秘したままのジヨンは、更生施設に送られてしまう。そんなジヨンに何度も面会に行くテヒ。テヒは、自分を家族と認めないかのような扱いをされていることに耐えられなくなり、家を出る決心をする。そして、テイテイをオンジョたちに預け、行き場がないとつぶやいたジヨンを誘って一緒に飛行機に乗って映画は終わる。あとの三人のことは言及せず終わるので、テヒとジヨンの物語だったのだろう。

 

全編、若々しい瑞々しさで満たされた爽やかそのものの青春映画で、猫の存在をどう解釈するのか難しいが、五人の絆として証の存在なのだろう。二十年近く前にこういう韓国映画があったんだと感心してしまいました。いい映画だった。。