くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「中国娘」「ハッピー・ゴー・ラッキー」

中国娘

「中国娘」
ロカルノ映画祭金豹賞受賞作品。

年頃になるまで村をでたことがなかった少女メイは、自堕落な生活をしていた。ある日、地元の若者にレイプされ嫌気がさして友達と都会へでるべく重慶へいく。そこで一人のやくざ物の若者スパイキーと知り合い暮らし始めるが、その男もなにかの争いで命を落としてしまった。

どうしようもなくなったメイはイギリスへ渡り、不法就労をしながら毎日を過ごす。ある日、一人の老人と知り合い結婚をするが、何か満たされない物を感じ、家にデリバリーサービスで配達にきたインド人の若者リチャードと同棲を始める。

やがて妊娠するが、リチャードはインドへ帰る。一人の残されたメイは大きくなってくるおなかをかかえて放浪するところで映画は終わる。

全編にモダンな音楽が流れ、退廃的なムードの中で都会や西洋へのあこがれの中、日々の暮らしに目的を無くし、どうすることもなく生きる一人の少女を通じて、しだいに若者の考え方が変化していく様を描いている。

かつての1970年代前後の日本映画のような伊吹が感じられるのは、今や高度成長を迎えた中国とだぶる社会の変化があるかもしれません。

飾りたてた映像を駆使するわけでもなく、素朴なカメラワークで淡々と一人の少女の生き方をとらえた映像は、冒頭の貧しい農村というかつての中国の景色に始まり、高度成長はなやかな大都会へ舞台を移して、さらには若者のあこがれである西洋社会へと物語が移っていく。その展開をじっと見据えるようなカメラの視線は明らかに今の中国の若者の視線であり、国の行く末をとらえる姿なのかもしれません。不思議な魅力のある一本でした。

「ハッピー・ゴー・ラッキー」
ヨーロッパ映画らしい軽快なタッチで主人公ポピーが自転車に乗って颯爽と走ってくるシーンにタイトルがかぶる。
天真爛漫と思えるような明るい笑顔がこの作品の姿を叙述に語っているようなオープニングにわくわくさせてくれる。

この主人公ポピーはすでに30歳だが陽気すぎるほどに明るい小学校低学年の先生である。この日も書店に寄るべく自転車を置い店の中で、無愛想な店主に愛想を振りまいて店を出てくると自転車がない。でも彼女はめげずに「まださよならも言っていないのに」とニコニコ笑って帰っていく。
同居する親友のゾエや妹たちとディスコで馬鹿騒ぎをして自宅に帰っても終始馬鹿笑いが耐えないこの主人公ポピーの姿にちょっと入り込めないものを感じたままストーリーを追うことになりました。

確かに、あらゆることを笑い飛ばして暗さを払拭していこうとする前向きな彼女の姿はそれがこの映画のテーマなのだといわんばかりにこれでもかと繰り返させる吹き飛んだような笑いのシーンが姉妹には鼻についてくるのである。そしていったんそういう風に感じてしまうと、どうにもこの主人公を演じたサリー・ホーキンスが好きになれなくなってくる。

物語は彼女がスコットという自動車教習の講師とのどたばたやら、学校での子供たちの問題やらが中心に展開するがどれもこれもが馬鹿笑いの連続と機関銃のようなせりふの応酬に参ってくる。どうも個人的に好みの映画ではないようである。

ラストは親友のゾエとボートに乗ってこれからもハッピーに生きて意向みたいなせりふでカメラが引いてエンディングとなる。

たわいのない日常を捕らえながら、ひたすら前向きで、周りを明るく巻き込んでいこうとするポピーの行動を通じて、時に誤解を生み、時にラブストーリーをもたらし、時に不思議な魔力を与えてくれたりするという人生賛歌のようなドラマである。ひたすら人生を駆け抜けていくポピーの姿をカメラが必死で追っているという監事の作品で、ふと立ち止まるととんでもないことになっていたりするが、それでもさらに前に前に走り抜けていく。
ラストシーンでようやく穏やかなシーンで締めくくるものの、全体はちょっと騒がしいかな。個人的には好まない映画でした