カルト集団に洗脳された主人公が体験する心理サスペンス。という前知識がないと最初から何のことかわからない。といえなくもないけど、いつのまにかジワっと恐怖を呼び起こす作品でした。
森の中で集団生活をする建物のショットから映画が始まる。一人の女性マーシー・メイが夜明けとともにその建物を抜け出し森を抜けて逃げていく。そして姉のルーシーに電話をし彼女のところで暮らすようになる。
マーシー・メイの本名はマーサといい、二年前にカルト集団で共同生活を始めたのである。マーシー・メイというのはその集団生活の中での呼び名である。
同じショットから過去と現代を繰り返すという演出で物語が進んでいく。時に現代で奇妙な言動をとって姉とその夫を驚かせる。過去に戻れば彼女がいかに洗脳されていく様、さらにカルト集団の異常な毎日が語られていく。
今にも追跡の手が姉の家に迫ってくるのではないかという恐怖におびえるマーサの姿、その様子が理解できずに奔走するルーシー夫婦。物語は現代のマーサのおびえを中心にじわじわとカルト集団の異常な姿がエスカレートして描写されるのです。
かつて、ある家に忍び込んだマーシーたちがその住民に見つかりその男を殺してしまったところでマーシーはここを逃げることにする。
一方の現代ではマーサの行動に手に負えなくなったルーシーたちがマーサを病院に入れることにし、車で送っていく。その背後にカルト集団のリーダーの車らしいものが追ってくるショットでいきなりエンディング。この後の恐怖?あるいは希望?見えない唐突な終わり方であるが、それがかえって彼女の洗脳がいかに奥の深いものかという恐怖をかき立てる。
しかしながら、期待しすぎたところもあるが、びっくりするほど優れた映画ではなかったという感じでもあります。たしかにじわじわと忍び寄るような恐怖感は描けているけれど、どうも今一つスパイスにかけるという出来合えだったように思います。