くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「赤頭巾ちゃん気をつけて」「俺たちの荒野」「太陽を盗んだ男」「赤い鳥逃げた?」

「赤頭巾ちゃん気をつけて」

こういう映画は本当になくなってしまいました。行き場のない若者の姿をストレートなセリフの繰り返しとカメラ演出だけで見せる典型的な作品。ラストの一人の少女を見送って前向きになる主人公のシーンが胸に迫ってきます。監督は森谷司郎

 

主人公薫が、犬の散歩をしている。1969年の東大紛争で東大入試が中止になり、一気に目標を失ってしまった若者たち、その一人が今回の主人公。そして、家に駆け込んで足の親指に怪我をし、好きなテニスができなくなるところから映画は始まります。

 

恋人らしい女性もいるが、どこか冷めているし、友達も皆、行き場を無くしたように薫の周りに溢れている。酒を飲み、踊り、SEXをし、意味のない恋愛なのか女遊びにしか進む方向が見えない若者たち。

 

そんな若者を描くために長ゼリフ、カメラアングルを駆使し、時に世の中の動きを捉えるカットが挿入されていきます。殺伐とした心を終盤まで描きますが、赤頭巾ちゃんの絵本を買いに来た少女と出会った薫は、彼女のために夢のある赤頭巾ちゃんの本を選んであげて、見送る。

 

帰りに恋人を誘い、夜の街に歩いていく。雪が降ってくるが心はようやくなにかを見つけたかのように未来を見ているようです。青春映画の傑作です。切ない恋も何も出てこないけれど、どこか、若さ故の未熟さがたまりません。良かった。

 

「俺たちの荒野」

これは良かった。二人の青年のやるせないほどの青春の一瞬がバイタリティあふれる演出で描かれていきます。こういう勢いのある映像はとにかく観ていて引き込まれてしまう。監督は出目昌伸

 

哲也とジュンは上京してきたものの就職にあぶれ、哲也はバーで働いたり米軍の軍人に女を世話したりしながら、女の紐のような生活。一方のジュンは車の整備工場で働いている。二人はある時荒地のような土地でバイクを乗り回していて、一人の清純な女性ユキに出会う。そしていつの間にか3人で遊びまわるようになる。

 

やがてジュンはユキに惚れていくが、その清純な姿に次第に哲也も彼女に惹かれてしまう。そして、哲也の彼女の嫉妬からちょっと疎遠になった3人は一旦は別れ別れになるが、いつのまにか惹かれ会うように集まる。しかしすでにユキの心は哲也に傾いていて、ある時突然、ジュンは鉄塔から身を投げて死んでしまう。

 

哲也はジュンの遺骨をジュンが買った荒地に撒いてやり映画はここで終わる。とにかく展開のバイタリティが半端ではなく、青春のほとばしりという感じのみずみずしい迫力に満ちている。かつて若者たちは熱かった。そんな懐かしささえ感じる爽やかな映画だった気がします。

 

太陽を盗んだ男

およそ40年ぶりくらいにスクリーンで見直したが、やっぱり面白い。傑作やね。ただ、こんな題材をとった為に長谷川和彦監督、映画を作れなくなったのは残念。

 

冒頭の原子力発電所を観察している主人公木戸の姿と音楽にかぶるオープニングから、原爆を作る緊張感あふれるシーン、さらにその後のアクション、そして、ディスクジョッキーとの絡みから、クライマックスへ。

 

たたみこんでいくストーリー展開のリズムとテンポの良い編集、カメラワークが絶品。しかも主人公のキャラクター造形も実に面白い。

 

主人公は狂人なのだが、人間味溢れている。その生身感の面白さもストーリーに見事な味付けになっているし、明らかなフィクションながらも、リアリティのあるシーンの連続もうまい。

 

前半の被曝するシーンや猫の死、後半のDJの死など、切ないシーンもしっかり書き込まれた脚本も言うことなし。まあ、終盤がややしつこいのだが、それでも一級品のピカレスクロマンだと思います。

 

「赤い鳥逃げた?」

やっぱり良かった。ほぼ40年ぶりくらいか、若き日が蘇ってくるノスタルジーもありましたが、青春映画の名作だなと思います。監督は藤田敏八

 

卓郎が人妻とベッドでSEXしている場面から映画が始まる。そこへ出張していたはずの夫が帰ってきて、胡散臭い銃を持った宏も入ってくる。這々の体で卓郎は逃げるが、実は宏も夫も卓郎もグルだった。

 

宏と卓郎は、目的もない毎日の中、その日暮らしのような適当な仕事で生活をしている。寝る場所がないという宏を卓郎は、自分がころがり込んでいる女の部屋に連れていく。そこにはマコという自称令嬢がいた。

 

こうして3人の、目的もない青春物語がスタートする。とにかく行き当たりばったりに生きる三人の生き生きした姿がみずみずしいほど純粋な感じなのです。

 

とはいえ、これと言って仕事もなく、ゆすりたかりまがいのことで生活する三人は時に警察に逮捕されたりしながらの日々。そして、マコの正体を知った宏たちは誘拐したことにして富豪の父に金を要求するが、取引の現場で、父はその娘は自分の娘ではないと言って取引を拒否する。

 

どうしようもなく三人は車で走り出すが、直前にトランクに隠した元刑事を追ってパトカーや野次馬とカーチェイス。そして取り囲まれ、卓郎も撃たれて死んで、宏とマコは車に立てこもる。警官の集中銃火を浴び車は爆発して映画は終わる。

 

短く燃え尽きた若者たちの一瞬の物語は、とにかく、胸にグッと残る切なさを感じさせられます。やはり名作ですね。