くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「指輪をはめたい」

指輪をはめたい

こういうファンタジックコメディは大好きなジャンルの映画なのです。どこか乙女チックな映像と、しゃれた、軽いのりで展開するコミカルなシーンの連続、そして今回は大好きな小西真奈美さん、池脇千鶴ちゃんが出ているのだからまったくいうことなし。少々作品の出来映えが悪くても許せてしまうのです。

開巻、ぼんやりとした画面に白い影のような映像。どうやらレオタード姿の少女たちがスケートを滑っているらしい。そして、一人の男(山田孝之)のアップ。病院で目を覚ました彼には少し前の記憶がない。妙に不思議なイメージの女医さんと看護婦の会話から一気にこの男片山が気を失ったらしい場所であるスケートリンクに忘れた会社の営業の鞄を取りに飛び出す。

こうして始まる物語は非日常のコミカルな演出と軽妙な導入部でわくわく引き込まれてしまう。スケートリンクでは彼の鞄を肩に掛けた少女エミが滑っている。空き缶やスリッパを投げて彼女を止まらせようとするマンガチックなシーンも大好き。

そして手にした鞄にはなぜか婚約指輪らしいダイヤの指輪が。会社に行くとそこの研究員で超エリートの女性智恵が彼になにやら近づく。公園に行くと人形パフォーマンスをする素朴な少女和歌子が彼に近づく、さらに近くの風俗店ではめぐみという人情味あふれる女性が彼に近づく。どうやらこのうちの一人と結婚をするつもりなのかと奮闘するのが物語の中心だが、あちこちにちりばめられたドタバタなコミカルシーンが小気味良いし、智恵役の小西真奈美、和歌子役の池脇千鶴、めぐみ役の真木よう子それぞれが本当にかわいらしいので見ていてドキドキしてしまうのです。

ところが、次第にスケートリンクでであう少女エミが片山の心の大きく占め始め、次第に記憶をなくした断片が明らかになってくると、とたんに映像が失速してくる。

まるで取り憑かれたようにスケートリンクに通う片山は会社を無断欠勤。心配した智恵が家に来るとそこで和歌子やめぐみと鉢合わせしてしまう。このあたりからいままでの軽快なリズム感が妙に滞り、淀み始めるのだ。そして、このエミこそがかつての片山の彼女で同棲もしていたが、いつの間にかできた二人の間の溝から別れてしまった経緯が語られはじめ、一度はこのエミが死んだのかと思わせるショットもあったが、現実は別の男性と結婚をしているらしいことが明らかになってくる。

やがて、智恵は外国の研究施設に志願して会社を出て、和歌子はパフォーマンスが認められてテレビデビュー、めぐみも結婚退職して片山の前から消える。一人になった片山はスケート場でひたすらスケートを滑る。エミも最後に片山にさよならをいって別れる。「思い切ってこけてけがをするときのために絆創膏を持ち歩いているのでしょう」というかつてのスケート少女だったエミの声が響いて、なぜか微笑みを浮かべ晴れやかになった片山の姿でエンディング。

こうして書いてみると、後半三分の一と前半が妙にちぐはぐなのがわかる。しかも実際の映像も、終盤に非日常なコミカルな演出は皆無になる。これは意図したものかもしれないが、どこか全体がまとまっていない。この岩田ユキという監督は今回初めてであったが、女性特有の繊細な笑いが作品全体にちりばめなかったのが本当に残念な気がします。

とはいっても、冒頭に書いたようにこの映画はそんな欠点を無視してもあまりあるほどに楽しめる作品でした。これでいいんですよ映画の楽しみ方は。私は大満足です。