くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「テイカーズ」「ハードロマンチッカー」

テイカーズ

「テイカーズ」
新鋭ジョン・ラッセンホップ監督が放つスタイリッシュアクション。全米大ヒットというふれこみに乗せられて見に行きました。

非常に細かい編集を繰り返していく映像は、実にハイスピードでめまぐるしく展開していく。悪くいえばドタバタとし過ぎているかにさえ見える映像展開であれよあれよと、導入部からラストシーンまで引っ張っていくバイタリティは噂通りの最高におもしろいアクション映画に仕上がっている。

どこか香港映画を思わせるような荒削りな脚本であるかに思えるが、終盤に向かうにつれて徐々にアメリカらしいちょっと後味の悪い展開が見え隠れしてくるのがちょっと私にはあわない。それは、この物語の中心になる強奪事件の計画を持ちかけてくるゴーストの存在である。

結局最初から胡散臭いままにやっぱりラストで仲間を裏切る。このゴーストの存在をもう少しカムフラージュして善人に見せたらこの映画はもっとおもしろくなった気がしないでもない。

主人公はジャックという刑事である。映画が始まって彼と相棒が麻薬取引の現場へ向かう。一方、常に周到な計画で現金強奪を繰り返すプロの強盗団5人が銀行へ強盗に入る。鮮やかに金を奪ってマスコミのヘリコプターを利用して飛び去るくだり、もっと爽快感があっても良さそうだがカットが細かすぎてかえって逆効果になった、メリハリのリズムがあれば見事な導入部になったのがちょっと残念。

二つの物語が次第に交わっていくという展開なのだが、終始ハイスピードのめまぐるしい映像がストーリー展開に緩急をもたらさず、観客の心理を無視してどんどん進む物語は確かにおもしろいが、今一つ頭に残ってこないのである。それぞれの登場人物の名前さえ理解しないままに物語がどんどん進んでいく。しかし、いつの間にかどうでも良くなってあれ世あれよとクライマックスへ。

現金輸送車を地下通路へ落とし、無理矢理強奪して逃亡。冒頭の鮮やかな強盗シーンとは裏腹にかなり雑いのがなんともストーリー構成の甘さだろうか、それとも派手な見せ場にしたいための展開か、もう一工夫ほしいかもしれない。撃ち合いの末に逃げたものの、地下鉄を使って逃げた一人がジャックに見つかり延々と続く逃亡シーンへ。人間業と思えないくらいにアクロバティックににげる犯人の姿がものすごいハイスピードとカメラワークで追いかけていく胸のすくような最大の見せ場である。

そして何とか逃げ仰せたが、ゴーストの裏切りで別のロシア人の強盗団が襲ってきて、派手な銃撃戦が繰り返され、まるでジョニー・トーの映画よろしく羽枕の羽が舞い上がったりスローモーション、撃ち合いのショットの繰り返し。ここもまた見応え十分。

金を運ぶ犯人をゴーストが待ち伏せ、自家用機のまえでの銃撃シーンにジャックも加わって、ゴーストは死に強盗団のうち三人も死んでしまい、残る二人とそのうちの一人の薬中の姉といずこかへ去っていってエンディング。

見せ場の連続とあわただしい映像に翻弄されるが単純におもしろいと呼べる娯楽映画でした。もう少し人物のドラマにも演出の力を振り分けたらもっと良質の作品になった気がします。この監督の次の作品が楽しみです。

「ハードロマンチッカー」
グ・スーヨン監督が松田翔太を主演に描くバイオレンスアクション。

といっても、これといって一本筋の通った物語はなく、ひたすら下関を舞台に不良たちのバイオレンスシーンがこれでもかと繰り返される。

とにかく何かにつけていちゃモンを付け殴りあう。なんで、殴りあうのか、なんで喧嘩をするのかが今一つ伝わってこないし、やくざがらみの浪花節のごときシーンも何のためなのかなんとも理解しづらい。しかも、せりふが聞き取りにくくて時々意味不明になる。

抗争を繰り返しているのはどうやら在日韓国人同士のようでもあるが、井筒和幸監督が描くやんちゃなバイオレンスとは桁が違っていて、どこに焦点があるのかわからないままに、高校生売春やらもからんできて、どんどんバイオレンスシーンばかり繰り返されて、やがてエンディング。

渡部篤郎扮する刑事の存在も今一つ本編に絡んでこないし、中村獅童扮する小倉のやくざの幹部の独特の個性も今一つ生きてこないのがもったいない。

記憶に残ったのは松田翔太らのぼこぼこにされたあざだらけの顔ばかりであったという結末。
おもしろいとか、ここが見所とかは説明しづらいけれど、常に斜に構えたカメラアングルがインディーズのごとき初々しさを生み出し16ミリ作品のような凝縮されたムードを生み出しますが、これだけの長さならもっとおもしろ区営が着きれるのではないかと思えるような印象に残る作品でした。